イギリスのモバイル銀行、3大アプリ比較!モンゾー/レボリュート/スターリング
野本 菜穂子
モバイル銀行とは?
モバイル銀行とは、スマートフォン・タブレットアプリを通じ利用できる銀行サービスのことです。前回の記事「ヨーロッパで一番キャッシュレスが進んでいる国4選!文化的背景、特徴【イギリス・スウェーデン・デンマーク・エストニア】」で見た通り、ヨーロッパでもキャッシュレス化が最も進んでいるイギリスでは、口座開設から利用まですべてオンラインで完結するデジタルバンクが大人気です。煩雑な手続きがなく、UX・UIもシンプルで使いやすいアプリを多くのチャレンジャーバンクが生み出しており、ミレニアル世代やZ世代がこぞって使用している新しい銀行の形がモバイル銀行です。
以前の記事「【モバイルバンキング】イギリスで人気のモバイル銀行アプリ6選!」でもイギリスのモバイル銀行アプリのトップ6社を取り上げましたが、今回は中でも知名度が高いMonzo(モンゾー)、Revolut(レボリュート)、Starling(スターリング)を比較し、それぞれのサービスの特徴を掘り下げます!
Monzo(モンゾー)、Revolut(レボリュート)、Starling(スターリング)の共通点
3各社とも、デジタルバンクの最も大きな特徴である以下の点を満たしています。
- イギリスの普通口座に関する全てのサービスが無料で利用できる(給与受け取り、デビットカードでの支払い、銀行口座送金など) 。
- スマホアプリを利用するため、いつでもどこでも残高照会、振り込み、送金などの手続きをすることが可能。
- 口座開設からデビッドカード申し込みまで、すべてスマホで完了。数日〜1週間以内にカードが自宅に郵送され、面倒な身分確認もなし。個人利用はもちろんのこと、ビジネスアカウントも展開。中小規模のビジネスオーナーにとっても魅力的。
- 通知機能。送金、振り込みなどの取引が行われた瞬間に通知を受けることができる。
- 自動的な家計簿機能。
- カードを紛失した時は、アプリより瞬時に停止。
- 海外送金・デビットカード利用・ATM利用が可能。
- 各社とも有料のプレミアムアカウントも展開中。
では、それぞれこのほかにどのような違いがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
Monzo(モンゾー)、Revolut(レボリュート)、Starling(スターリング)の相違点
会社情報
ユーザー数、オフィス拠点数からみると、Revolutが圧倒的に規模が大きいことがわかります。Starling社が最も設立が早かった一方、今ではMonzoとRevolutのユーザー数が上回っています。しかも特筆すべきは、RevolutとMonzoの従業員数はほぼ同じである一方、Revolutのユーザー数は2倍以上であること。Revolutの勢いを感じる数字です。
オフィス拠点数に関してはRevolutが最も多く展開していますが、2019年6月、Monzoは近年中にロサンゼルスにもオフィスを構える予定を発表しました。
Starlingは、イギリス南部サウスハンプトンに第二の拠点を開く予定と2016年5月に発表し、現時点では海外展開について触れていません。
普通口座のサービス
Revolutは少額のカード登録・郵送費がかかる一方、イギリス国内だけでなくEEA圏内に住んでいる人なら誰でも加入できるというメリットがあります。ユーザー数が最も多い理由が、ここにあります。
仮想通貨に関しても、2017年にチャレンジャーバンク史上初仮想通貨を導入したRevolutが先導しています。取り扱っている23通貨を、Bitcoin、Litecoin、Estherの3種の仮想通貨に自由に交換できます。Revolutユーザー同士の仮想通貨の送受信は、瞬時に行われ、非常にスムーズなサービスとなっています。
旅行・海外利用
海外送金や、海外での利用(デビットカード・スマホ決済)に関しては、レートや手数料の観点からいうとMonzoが優れています。
一方、Monzoの手数料無料の対応金額は月200ポンドまでなので、海外渡航を頻繁にする多くのユーザーはいくつかのカードを併用しています。事実、筆者もヨーロッパ内の旅行にはMonzoとStarlingのカード1枚を必ず持って行っています。(キャッシュレスな場所が増えているので、200ポンドもの現金は必要がない場合がほとんどですが。)
Monzo(モンゾー)、Revolut(レボリュート)、Starling(スターリング)の比較
Monzo
Monzoはデジタルバンキングを身近にした最初のチャレンジャーバンクと位置づけられるでしょう。
サービス展開初期は、週2万件のペースでユーザー登録され、登録までの待ちリストができたほどの人気ぶりでした。クラウドファンディングで100万ポンド(約1.4億円)をたったの96秒で集めたり、ほとんど広告費をかけずに運営していたりなど、勢いが売りのクリエイティブなスタートアップです。
当初、ビビッドなコーラルピンクのカードが多くの若者の注目を浴びました。街中で使用する人が溢れ、口コミであっという間に広がりました。ブランディング力が強い企業と言えます。
Revolut
ユーザー数、オフィス拠点数、サービス内容という点から判断して、最も規模が大きいチャレンジャーバンクがRevolut。
人気な理由として、ユーザー層の大半を占めているヨーロッパのミレニアル世代が支持するようなCSRに力を入れていることが挙げられます。
例えば、2019年7月、募金の形をデジタルによって改革したことが注目されました。カードの支払金額を最も近い整数へと切り上げ、切り上げた金額分チャリティーに寄付される新機能を追加しました。カード決済の金額を四捨五入する方法に加え、日・週・月ごとに一定の金額を設定することも可能にしました。
また、寄付目的をタップすると、個人が寄付した金額と、世界中のユーザーが寄付した総金額を確認することもできます。もちろんタップ一つで、寄付を中止することもできます。また非常に魅力的なのが、非営利団体は一切手数料を払わなくてすむこと。現在、Save the Children、WWF、LGBTQ+ のサポートを行うILGA-Europeの3つの慈善団体と提携しています。
ヨーロッパのミレニアル世代は、環境問題、人権問題といった社会的な問題に非常に関心を持っています(このトレンドについてはこちらの記事「ヨーロッパではもう当然!エシカル消費(ETHICAL CONSUMERISM)の注目キーワード6選」で詳しく取り上げています)。ライフスタイルに合わせた募金の仕方が、ミレニアル世代の心を掴んだと言えます。
Starling
上記2社に比べると規模が小さく感じるStarlingですが、実はビジネス向けアカウントに関してはどのチャレンジャーバンクよりも多い登録数を誇っています。2016年にイギリスで初めてのビジネス用モバイルバンクとしてサービスを開始し、2019年8月現在、695,000 ものビジネスアカウントが登録されています。
また、Starlingは郵便局でのサービス(振込、引き出し)を可能としている唯一のチャレンジャーバンクです。数あるデジタルバンクの中で、うまく差別化を図っていると言えます。
まとめ
以上、イギリス発のトップチャレンジャーバンク3社を取り上げました。それぞれ異なる強みを持ちながら、差別化を図っています。
ヨーロッパには、ほかにもN26、Acorn、Transferwise、Atomなど多くのデジタルバンク企業が存在します。本記事で取り上げた3社に関するより詳しい調査が必要な場合や、ヨーロッパ全域にわたるデジタルバンキング事情を知りたい場合は、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください!
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