CBD弁護士新城安太先生が語る日本のCBD市場:市場拡大のエンジンとなる鍵とは?第1部
作者: 増野謙、アレクサンダー・ブラウン
大麻取締法の法改正が2023年に先送りになったが、この現状の中、グローバル企業がCBDの販売を拡大するための有望な市場として日本に注目しており、日本を中国や韓国市場への入り口として考えています。
日本におけるCBDの将来は期待されるものの、現状は複数の障壁があります。今回、日本のCBD市場における企業が直面している課題をより理解するために、東京エスクの増野謙がCBD弁護士の新城安太先生にインタビューし、業界について洞察を深めました。
この2部構成のインタビューシリーズの第1部では、新城先生が日本のCBD市場を紹介し、現状日本のCBDに関する規制と、規制緩和が日本市場に進出することを目指している海外企業にどのような影響をもたらすかを説明します。
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増野謙:今日はよろしくお願いします。
新城安太先生:よろしくお願いします。
増野:最近話題になっている規制緩和の可能性を踏まえ、今回は東京エスクが新城弁護士に対して、日本のCBD業界全般について現状、そして今後、様々な点からお質問をさせていただければと思っております。よろしくお願いします。
新城先生:よろしくお願いします。
増野:まず、新城先生の簡単な自己紹介、そしてなぜCBDを取り扱いだしたのかと、何かきっかになった事例とありましたら、ご教授お願いいたします。
新城先生:はい、承知しました。まず、わたくしは弁護士法人至誠法律事務所という東京の霞が関にある法律事務所に所属している弁護士でございます。新城安太と申します。主な取り扱い分野は医療系ですとか、ネット通販にかかる事業者さんとの関わり合いですとか、あと広告関係とかそういった方に主に取り扱っております。その中でもCBDにかかわる領域につきましては、約3年間ほど関わっておりまして、日本においてあまりそのCBDを専門とする弁護士がいない状況の中で、学会への発表、関係団体への関わりを通して、CBDに関わってきました。
CBDに出会ったきっかけですが、ちょうど3年前くらいに、まさに日本でもコロナ禍真っ只中でございまして、わたくしの方でCBDの吸うタイプのベイプというものをユーザーとして使っておりました。使ってはいるものの、「これはには大麻成分が含まれている」と聞いて、弁護士ですのでそこは少し不安になりました(弁護士が大麻を吸ったら資格がなくなってしまうので)。それで自分で調べたところ、弁護士、法律の専門家などのような方が書かれた解説文が一切なく、ただ「合法である」ことは書いてありました。これについては少し不安を覚えまして、自分の方で刑事に関する法律、大麻の取り締まり法などに関する法律の解決本をしっかりリサーチをかけて調べたところ、どうやら大丈夫らしいことと、世界的な市場が広がりつつあることがわかりました。
その当時、日本の厚生労働省の中で、「大麻取締法が今後変わるべきなのでは」との検討会が始まるタイミングではありました。これはもしかしたら世界的な流れが日本にも来て、法改正によってCBDがより流通しやすくなるのではないかと思いました。そこに、弁護士として活躍のチャンスがあるのではないかとも思って、CBDに関わるようになりました。これがきっかけにはなります。
増野:ありがとうございます。当初、使われていて気になって調べてみたら明らかな情報不足ということで、新ジャンルを発掘したということですね。我々の業界でよくいう「Find your niche」といって、まさに自分のニッチェな業界を見つけた印象を受けますね。
それでは、3年ほど前からということだったが、日本では2016年ごろからCBDの製品が出回るようになり、CBD商品が日本に入ってきたと思います。ここ数年、先生が第一人者としてCBD業界を日本の法律の観点から見てきました。その間、案件数や取い合わせ当がどのように推移しているかも聞かせていただけますでしょうか?
新城先生:はい、私が関わり始めた当所は、割とひっきりなしに取い合わせを頂く状況でございました。と言いますのも、「2年後ぐらいに法改正があるらしい」という話がかなりあり、CBDが「今後来るらしい」という風潮がありました。あとはシンプルに、関わっている弁護士が誰もいなかったというところもありましたので、そういった意味で、問合わせ件数はかなり多かったです。一か月の問合わせベースの件数でいいますと、当時は10件ぐらいはSNSやホームページ経由での問合せがあり、その中には実際の案件もありました。当時、CBD事業者を対象とした無料のオンラインセミナーも開いて、それには計3回ほどオンラインセミナーをやったんですけど、すべて150名ほど参加者がいる状況でした。CBDに興味がある方が本当に多かった時なのかなと思っております。
そこから、また1年後も徐々に増えては来るんですけど、問い合わせの層が最初は個人事業主、スモールビジネスでやられている方が多かったのですけど、その翌年になってくると、「一つの商材としてCBDを加えたい」というネット通販で健康食品を販売している会社さんからの問い合わせが増えてきました。あとはCBDを取り扱いたいと思いながら警戒していた大手の企業さんからの法的なリスクに関するお問い合わせもありまして、「問い合わせの層が変わってきましたね」という印象を受けました。
それはおそらく法改正の議論が進んでいって「どうやら大丈夫そうだ」というような見込みになったことも受けたのもあります。それと、CBDが雑誌などにも取り上げられるようになって、一般的なウェルネスヘルスケアの層といった形の健康志向が高い人達の間での認知が広まってきたり、芸能人の中でもぽつぽつCBDを使用している人は増えてきたのもあって、そういった動きになったのかなと思っております。
で、これは後にお話しすることになると思うのですけど、今年に入ってその問い合わせ件数が結構ガタっと落ちてました。今年4月に予定されていた大麻取り締まり法律の法改正が延期になってしまったことと、CBD事業者さんがあまりにも増えすぎて、少し食い合う状況というか、CBD自体に対して思ったより消費者側の需要が追いついていないというところがあったのだろうという仮説があります。
実際に最近でいうと、CBD事業者さん、CBD事業を始めたい、CBDビジネスに興味があるなどという方から月1から2件ほど上がってきたので、ピーク時よりかは最大で10分の1ほどの問合わせ件数にはなっているのですけど、個人的には法改正の流れによってこれもまた徐々に回復して行くでしょうと予想はしているところでございます。
増野:ありがとうございます。今のお伺いしている中で、日本でCBD商品を販売したいという海外企業からの問い合わせは多いですか?それとも日本の事業者さんからの案件の方が多いのか聞かせていただけますでしょうか?
新城先生:はい、そうですね。案件でいうと一番多いのは、日本在住の方が日本で原料を仕入れてきて、それで日本でオリジナル商品を作りたいというのが正直一番多い層ではございます。その次に多いのが、海外のブランドを日本に持ってきたいので、「こうした提携の話は頂いてはいるんですけど、売り方がわからない」、「そもそも売ってもいいのかがわからない」、「輸入の仕方がわからない」、などの話しを頂くことが次に多いです。
海外から直接頂くケースがないわけではないのですけど、正直かなり少ないです。実際私の方で問い合わせ実績がある企業さんというのは例えば中国とイギリスのブランドさん、あとはアメリカで州でいったらカリフォルニアが3社ですね。すこし特殊なのがスペインの事業者さんも、海外のブランドを日本に持っていきたいということで問合せを頂いたことがあります。
増野:ありがとうございます。日本ですでに活動している会社さんのウェブサイトを見ていると、主な商品が大体携行用のオイル、サプリメント的なカプセルや錠剤ですね。
例えばですが、弊社に届く問い合わせの中で、グミ状で食べたり、肌に塗ったりする商品も販売している企業さんがありますが、そういった商品の種類に関して、現状日本での規制などはあるのでしょうか?
新城先生:はい。現状結論から申し上げると、商品の種類に関しては特に規制はございません。あとはCBD自体に対する規制が、大麻取り締まり法という法律以外は特段ございません。なので、日本の中でいうと食品として分類されるものは食品としてのルールを守っていれば、CBDを含有されていても売れます。肌に塗るものも、日本だと化粧品に分類されるんですけど、化粧品に分類されるのであれば、化粧品としての薬機法という法律の届け出をしっかりして、ライセンスを持っている工場でちゃんと作って販売していくということであれば特にCBDが入っていても問題ありません。
ベイプという吸うもの、あとはCBDを使ったような衣服などもたまに出てはいますけど、そういった物は基本的には日本では雑貨として取り扱いが認められていて、それにCBD入っていたら規制されているというのは現状ございません。なので商品の種類によってCBDを入れられる・入れられないのは特に日本では規制はない現状況になります。
増野:ありがとうございます。先ほども話題に挙がったんですけども、今年の春に予定されていた規制緩和が色々日本の政治的な動きのため、先送りになりました。
数年前は「規制緩和があり、商売がしやすくなる」という流れの一環で案件も増えていたと伺いましたが、現状これが先送りになました。例えばいつを目途に先送りになっているのか、そして状先生の肌感でも結構ですので、市場への影響などを教えていただけますでしょうか?
新城先生:はい。まず、こちらをご覧いただいている方が現状の規制どうなっているのか、それがどう変わる予定だったのかというのもどちらについてももしかしたらご存じない方もいらっしゃるかと思いますので、今の現在の日本の法規制がどうなっているのかについて簡単に説明いたします。
日本では、大麻取締法という形で大麻草、大麻の植物自体に規制があります。続いて、少し特殊な規制でして、部位規制、いわゆる大麻草の葉っぱ、茎、花など、そういった部位に着目した規制がされています。具体的にどこら辺が規制されているのかというと、大麻草という植物がある中のうちの茎と種の部分以外は大麻です。それ以外は、茎と種子というのは法律上大麻じゃないというのは整備がされております。なので、日本はこういうCBD、いわゆる大麻でいうTHCなど、そういった成分に着目した規制ではなくて、あくまで部位に着目した規制になっておりますので、葉っぱから抽出したCBDは実は違法になってしまうことになります。よって、日本でいうと認められているのは大麻ではない茎と種からとった抽出したCBDが日本で流通が認められているCBDになります。
ただこれは課題がありまして、ご覧いただいている皆さんはもしかしてよくご存じかも知らないんですけど、基本的に茎というのは繊維質なものでございますので、有効成分CBDとかが、あまり含まれていない部類になりますね。日本では、茎は伝統的な神の行事に使われるものとして、日本では結構重要とされてはいるのですけど、基本的にそこに有効成分が入っていない状況で、茎から本当にCBDを抽出しようと思ったら、かなり効率が悪くなる状況になっております。
で、実際に日本では今輸入の際には「茎から抽出した」という証明書、「どのように抽出したか」という製造工程を証明する書類などを出させています。それについても、結局海外の方でやられているので、本当に茎からとったかどうかはわからないというな現状があります。なので、そういった現状というのが「おかしい」というか「不合理」ということになりまして、規制緩和がされる予定でございます。
規制緩和がどのようにされるかというと、大麻草の部位に着目した規制だったのを、THCが大麻の規制すべき物質に当たるのであるから、THCを今後は規制し、成分に着目した規制になっていきます。なので、CBDは成分自体が今後ちゃんと認められた成分になるというような規制緩和がなされます。なので、大麻草であれば、一番よく取れる樹脂とか、花の部分とか、そういったところからCBDをとったとしてもTHCが含まれてないのであれば、それが大丈夫だというような規制緩和がなされる予定でなっております。
現状の規制とプロセスが海外への企業さんからしたらかなり特殊で、茎からCBDを作るのが大変でもありますし、「そもそもそういったことはやっていない」、「茎からわざわざとるわけがない」「茎は捨てる」のようなことは正直農家の方では一般的なので、そこについて対応するのが難しく、原料も比較的高額になりがちという問題点もあります。
後は、せっかく良質の大麻草か、CBDとして土壌がしっかりした商品があったとしても、日本向けの対応わざわざできないという方が多かったです。なかなかそこで輸入手続きもめんどくさいし、農家からしても煩雑であるというような課題がありました。それについて、成分に着目することによって、輸入手続きが簡単になることが想定されますので、かなりこれは海外から見た日本への輸出・日本から見た輸入はかなりやりやすくなることが想定されます。
さらに、日本の現在の法律だったら、仮にCBDだったとしてもそれは大麻の葉っぱ、花などから抽出した物はCBDであっても、厳密には違法という扱いだったのですね。上場企業・大企業の方から、それはすごいコンプライアンス上のリスクであるということがありまして、なかなかCBD市場に踏み切れない現状がありました。
今後はCBDであればどこから抽出しても大丈夫になりますので、それは大手企業が市場に参入していくにあたってかなりポジティブな事情として捉えられております。現状のCBD規制がどうであるかと、規制緩和がされるとどうなる予定と、もたらす影響としましてはこういったポジティブな影響が想定されております。
先ほど増野様からあったように、規制緩和が先送りになりましたというお話もありました。これにつきましては当所、本日時点なので2023年の5月17日、本当は2023年の4月に開かれる日本の通常国会という法律を作るための国会の議論において提出されて可決される予定でした。そういう座組では進んではいたんですけど、政治的な事情がありまして、今回の国会では提出されなくなったことが確定しました。
それにつきまして、秋に臨時国会というものがあって、10月ごろに国会が予定されておりまして、そこで提出されるかもしれないという話だったのですけど、これも正式に先送りになったことが、厚生労働省の方へのインタビューによってわかりました。具体的にいつまで伸びるのかという話ではありますけど、正直、確定的なものは厚生労働省の方がわからない状況になっております。ただ、私の方でいろいろ情報収集をしていく中で、厚生労働省の方が目指しているのはおそらく2024年度以内の法律の可決。
来年の4月、または来年の9月ごろの国会で法律を成立させて、それで再来年辺りに法律をしっかり施行をしていくような手はずを整えるということが厚生労働省のインタービューを通してわかりました。これは私の肌感なので、確定的な話ではないんですけど、そういったことを目指しているように思われます。
私の方で長々お話してしまっていますけど、基本的にはその先送りが市場にもたらす影響というのは、先ほど私の方で申し上げたポジティブな要素というのがすべて失われるということですよね。なので今まで通り輸入規制というのはまだ煩雑なままですし、海外企業が日本に進出するような目標となっていた規制緩和が延期になってしまったので、それも延びてしまうと。
さらに大企業もこれに通じて商品開発を検討段階で進めてはいて、もしくは進めていたはずではあるのですけど、その正式なローンチ時期がずれてしまうので、その新商品としてカウントした期間を別の商品を当てないといけないことになります。そうなっていくうち、徐々にCBDへの熱はどうしても下がってきてしまいますので、先行きもまだ確定的なものはわからないというような状況ではあります。大手企業の市場参入に対する動機が結構失われてきつつあってしまう、冷めつつあるというのが現状のネガティブな影響ですし、海外企業の進出というのも遅れてしまうというのもネガティブな影響になります。こういったところが規制緩和が先送りされた影響として挙げられるのではないかと考えております。
増野:ありがとうございます。弊社に来る問合せもかなり日本市場に興味がありますけれども、植物の部位に着目した規制を知らない企業がかなり多いです。それを聞いて、びっくりする声もやはり弊社にも届いております。
新城安太弁護士は東京にある至誠法律事務所のCBD・ヘンプ/通販・広告/医療機関・医療ビジネス(主に自費診療)に特化している弁護士です。約3年前にCBDに関わりだしてから、日本におけるCBD法律の第一人者となり、業界の最新動向を常に把握しています。新城先生のウエブサイトはこちらから、ツイッターはこちらからフォローできます。
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