
聖パトリックの祝日とは?世界各地での祝われ方とマーケティングキャンペーン
Mao Asabe、Honoka Karikomi
聖パトリックの祝日(セントパトリックデー)は、キリスト教カトリックの祭日で、毎年3月17日に祝われます。3月17日は、アイルランドにキリスト教を伝えたとされる聖パトリックの命日であり、アイルランドをはじめヨーロッパ各地でその栄誉を称える祭典が彼に敬意を表して行われています。聖パトリックの祝日の期間、町や都市はアイルランドのシンボルカラーである緑色に染まりますが、これはアイルランドがその美しい緑の景観から「エメラルドの島」(諸説あり)と呼ばれていることによるそうです。現地の人は緑の服を着てアイルランドのレプラコーンの妖精の仮装をしたり、緑色の食べ物を口にしたり、緑色のビールを飲んだりする習慣があります。また、アイルランドの国花でもあるシャムロックと呼ばれる三つ葉のクローバーは、この期間によく見かけられますが、これは聖パトリックが三位一体について説いたとき、三つ葉を手に持っていたからであると言われています。

アイルランドの首都タブリンでは毎年大きなパレードが行われていましたが、コロナウイルスの発生により過去2年間のパレードが中止となっていたため、3年ぶりとなる今年のパレードはより大きな盛り上がりとなることが予測されます。
[ビジネスコラム]コロナウイルス流行が英国ビジネスにもたらした影響についてのブログはこちら:https://tokyoesque.com/the-effect-of-covid-in-the-uk-businesses/他地域での祝われ方
アイルランドのほかにアメリカ、イギリス、カナダ、ニュージーランドなど、多くの国で聖パトリックの祝日は祝われています。イギリスでは、ロンドンやリバプールなどの主要都市で、アイルランド系の住民が中心となってパレードが行われます。また、多くのアイリッシュパブでイベントが開催され、特別なアイルランド料理や緑色のビールなどが提供されます。アメリカではアイルランド系移民の多い東海岸地域、特にニューヨークやボストンなどの大都市でイベントが開催され、ニューヨークのマンハッタンでは、ダブリンを超えるほどの世界最大の聖パトリックの祝日パレードが行われます。シカゴではフルオレセインという無害の染料でシカゴ川が緑色に染まることで有名ですが、他にも警察がシャムロックのデザインの警察バッジを使用したり、ボストンの野球チーム、ボストン・レッドソックスは、聖パトリックの祝日時だけ緑のユニフォームとキャップを着用するようです。また、オーストラリアではシドニーのオペラハウスが緑色にライトアップされるなど、他の地域と同様、特別な時期であることは間違いありません。

日本での聖パトリックの祝日
日本では首都圏を中心にパレードや、アイルランド料理や音楽を楽しめるイベントが、アイルランド大使館や商工会議所の協力により開催されています。その他にも、東京タワーや三重県伊勢市の大鳥居が緑色にライトアップされるなど日本各地で日本とアイルランドの交流が伺えます。なお、原宿表参道にて例年開催されているアイリッシュ・ネットワーク・ジャパン(INJ)とセントパトリックスデーパレード東京実行委員会による「セントパトリックスデーパレード東京2022」は新型コロナウイルス感染予防のため開催が中止となってしまいましたが、パレードに変わり、INJではアイルランド音楽やダンスパフォーマンス、著名人へのインタビューなどを聞くことのできるオンラインイベントが開催される予定です。
祝日カレンダー(英国)についての記事はこちら

聖パトリックの祝日 海外広告事例
Shanore
アイルランドの手細工宝石を販売するShanOreは、年間を通じてアイルランドのテーマを軸にジュエリーを販売していますが、特に聖パトリックの祝日の期間にはシャムロックをデザインに取り入れたShamrock Collection の宣伝に力を入れており、人気商品となっています。

Jameson
アイリッシュウィスキーで知られているJamesonは、聖パトリックの祝日に贈るプレゼントとして自社商品の宣伝として、”Wide the Circle” (輪を広げよう)というキャンペーンを実施しました。このキャンペーンの興味深いところは、「ウイスキーは男性だけのもの」という固定観念を払拭するため、Aisling Beaというアイルランドの女性芸人をCMに起用し、ブランドのオープンで多様性に前向きな姿勢を広告を通して発信したことです。

グローバルマーケティングダイレクターのBrendan Buckleyは「これまでウイスキーは男性向けである、というような固定概念が見られることもあったが、Aislingを自然と起用したことでウィスキーが特定の人のためのものでもなく、ボーイズクラブのようなブランドでもないことを、はっきりと示すことができるでしょう」とメディアに語っています。
聖パトリックの祝日 海外マーケティング
Zoulife Spa / Mu Spa

町中が緑色に染まるほどの盛り上がりを見せる地域では、緑色を着ている場合には15%割引、というように地域の盛り上がりと店の販売促進を同時に行うキャンペーンがあります。聖パトリックの祝日が3月17日であることにかけて、17%割引など、更にイベントと関連付けることが出来るとより大きな話題となるでしょう。
Krispy Kreme Doughnut

期間限定のキャンペーンや商品は話題を呼ぶだけでなく、消費者に「その商品が手に入るうちに購入しなければ」という切迫感を与え、商品の需要を高めます。例として、日本でも店舗を展開しているクリスピークリームドーナツの販売が挙げられ、聖パトリックデーを含む3/16、3/17にのみ代表的な人気商品「オリジナルグレーズド」を緑色に塗ったものが販売されます。
Bord Bia
アイルランドの食品会社Bord Biaは「聖パトリックデー最大のご馳走」と称したキャンペーンを6週間にわたって実施し、Facebookのアプリを通じて消費者は好きなメニューを選択する機会がありました。このキャンペーンに参加した消費者はアイルランド旅行が当たる抽選に応募する権利が与えられ、このほかにも毎日懸賞が実施され、Bord Biaはエンゲージメントを高めることに成功しました。
Guinness

#AToastTo -2021
アイルランド発祥のビールとして世界的に有名なGuinessは、パンデミックの中、第一線で働くすべての人々の努力を称え、盛り下がりがちな気運を盛り上げる目的で#AToastToキャンペーンを実施しました。このキャンペーンでは、テレビCM、バグパイプのライブ演奏、限定商品の販売、ソーシャルメディアの活性化などが行われ、視聴者に#AToastToのハッシュタグを使って乾杯の言葉をネットで共有するよう呼びかけました。さらに、COVID-19の救済活動に60万ドルを寄付し、ブランドへのイメージ・信頼性も高めることに成功しました。
Guinness x Carhartt 2020
2020年にはGuinessはカーハートとのコラボレーションを行い、地域社会にスポットライトを当てた広告とイベント”The River”で注目を集めました。ギネスとアメリカのアパレル企業であるカーハートは、1962年から毎年セント・パトリックス・デーにシカゴ川を緑色に染めているシカゴ職工組合130番地の配管工に敬意を表して今回共同でイベントを行いました。両ブランドは”Work for the Better” の文字をあしらった共同ブランドのTシャツやパーカー、帽子などの衣料品ラインを立ち上げ、困難な時代に勤勉に働くシカゴ職工組合130番地を支援するための募金活動を成功させました。
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日本企業にとってのビジネスチャンス
日本ではまだあまり名の知られていない聖パトリックの祝日ですが、今回ご紹介したようにアイルランドを始めとした一部海外では重要なイベントとして扱われており、その経済効果は大きなものとなっています。キャンペーン以外にも、イベントのテーマカラーである緑色を一時的に商品パッケージや、店内の装飾に取り入れるだけでも話題性を呼び、集客効果が期待できます。
コロナ渦にとり自粛を強いられた人々は、イベントそのものの意味よりも、羽を伸ばしたり心を躍らせる機会としてひとつひとつのイベントを盛大に祝う傾向にあります。それゆえに、知名度が低く市場競争率が比較的低い聖パトリックの祝日に関連付けたキャンペーンやイベントを実施することは、消費者の興味を引くだけではなく、日本において聖パトリックの祝日を促進する先駆者としての位置を確立することを可能にし、今後の大きな利益に繋がるかもしれません。
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