[ビジネスコラム]コロナウイルス流行が英国ビジネスにもたらした影響
へティー・チョン(Hetty Chung)
イギリスでは現時点で950万人以上のコロナウイルス感染者数が確認されていることが政府の発表で明らかになりました。海外のコロナニュースの中によく現れている国の一つです。コロナによって世界の経済は打撃を受けましたが、一方で売り上げが伸びた業界もあります。この記事はイギリスのコロナ第二波流行がどのようにビジネスに影響を与えたかについて詳しく説明しています。
イギリスにおけるコロナウイルスの現状
イギリスの人口は2020年時点で 67.22百万人います。現時点で950万人以上のコロナウイルス感染者数が確認されており、14万3千人近くの人が死亡していることが政府の発表で明らかになりました。
ただし、この数字には、コロナウイルスの陽性反応が出てから28日以内に死亡した人のみが含まれています。
これまでのところ、英国の12歳以上の人の約88%が1回目のワクチンを接種し、80%が2回目、22%が追加で接種するブースター(COVIDブースターショットとは、最初に接種したワクチンによる保護が時間の経過とともに減少し始めた後に追加で接種するものです。一般的には、初回接種による免疫力が自然に低下し始めた後に、ブースターを受けることになります。)を接種しています。
NHS(国民健康保険)のリーダーたちは、冬の危機を回避するために、混雑した場所や閉鎖された場所ではマスクをする事を義務付けるなど、コロナ対策による制限の一部を再導入することを求めています。しかし、政府は現在のところ、そういった制限を再発動する予定はないとしています。
コロナウイルスによるイギリス経済への影響
パンデミックは、様々な形でイギリスの経済に影響を与えました。多くの企業が閉鎖し、ロックダウン規制や移動手段の制限を含めて、その経済影響は深刻です。
パンデミックによる不況の大きさは、現時点では前例のないものです。2020年のGDPは9.8%減少し、1948年以来の最も急な落ち込みとなり、一部の推定ではその沈みは300年以上ぶりと言われています。
最初のロックダウン、2020年4月の英国のGDPは、わずか2カ月前の2月に比べて25%減少しました。2020年の春から夏にかけて経済の開放に反映して、経済活動が回復しました。その後、秋から冬にかけて、コロナの感染者数の増加でさらなるロックダウンが発生し、経済活動は再び下落しました。
しかし、前年に比べ、落ち込みははるかに小さなものになりました。2021年春から初夏にかけての力強い回復により、GDPは回復しましたが、2021年7月時点ではパンデミック前よりも2%低い数値となりました。
パンデミックの影響は、経済のさまざまな分野に及んでいます。特に、接客業やサービス業など顧客と直接面談する業界です。一方で、金融サービスなど、比較的被害が少なかった分野もあります。
コロナウイルスによりイギリスでの売上が伸びた製品や業界
イギリス、2020年2月~10月、販売の推移 指標 2020年2月=100
調剤薬局は、パンデミックが始まって以来、常にパンデミック以前の売上を上回っている状態です。最初の封鎖期間中に営業が許可された必須店舗の1つである薬局の売上は、2020年3月に大きく増加しましたが、規制が緩和され、他の必須ではない店舗が再開された後も、6月まで増加し続けました。スーパーマーケットを含む非専門食料品店も、パンデミック前の水準を常に上回っていました。
オンライン販売ではなく、お客様の来店に頼っていた小売店は、閉店命令を受けた後、大幅な落ち込みを記録しました。しかし、家具小売店では、夏になると顧客が戻ってきて、コロナ流行以前の売上を取り戻し、さらに成長しました。これは、人が以前よりも家で過ごす時間が増えたことによるものです。
キャンプ場と他の宿泊施設の売り上げ比較
イギリスの宿泊施設総売上推移(2019年1月~2020年9月)の指数
英国では、夏休み中規制が緩和さましたが、宿泊施設の売上高は前年に比べて減少しました。
しかし、全体としてはそうではなく、キャンプに行く人が増えて、キャンプ場の売上は去年を上回りました。これは、海外への渡航の制限と、帰国後の自粛を見据えて、国内での休暇を決めた人が多いことが要因の一つと考えられます。
衣料品や靴の売上
イギリス、指数化されたカテゴリー別売上推移 2020年2月~10月
2020年3月および4月の衣料品、靴、皮革製品の小売り上げが減少しました。人付き合いが制限されたことで、新しい服や靴を買う理由が少なくなったためと予測できます。靴・革製品は、9月のBack To Schoolシーズンで一時的に売上が大幅に増加しました。しかし、他の衣料品と同様に、2020年全体の売上は2月の水準を下回っています。
オンライン販売
イギリス、インターネット売上が小売業総売上の何パーセントを占めるかの比率、2008年1月~2020年10月
パンデミックの第一波では、たくさんのお店が閉店し、オンライン販売へ移行したビジネスも多くなりました。
国家統計局(ONS)が発表した2020年10月の小売売上によると、「パンデミックの期間中、オンライン販売が例年よりも高いレベルに達した」と報告されています。オンラインでの購入は、2月の20.1%に対し、10月は28.5%を占めました。6月の店舗再開後、インターネットの小売売上高に対する割合は低下しましたが、10月には再び増加しています。
小売業者のビジネスモデルの変化
実店舗やショッピングセンターは、時代に合わせて、顧客に提供する体験やサービスをイノベーションしてきました。
オンライン体験取り入れの成功例として、具体的には以下のようなものがあります。
店内で商品を見てからオンラインで注文したり、オンラインで購入した商品を実店舗で受け取る“クリック&コレクト”という新しいショッピング体験が挙げられます。
大型店舗は、「在庫のない」小型店舗に移行しつつあリます。
例えば、百貨店John Lewis は、スーパーのWaitrose の店舗内に John Lewis のショッピングエリアを設置したり、より小規模な店舗形態を試しています。
また最近では、実店舗を持つビジネスは、オンラインでは得られない体験やサービス(スタイリスト、修理、カフェなど)を提供するビジネスが多くなってきています。
日本のビジネスはどのようにこのチャンスを活かせるでしょうか?
ロックダウンを2回も受けたイギリスには、実はチャンスがいっぱいあります。
一つ例をあげるとすると、飲食店です。ロックダウン後に、お店が再開し、特にレストランやパブの売り上げが再び上がってきました。日本料理でいうと、日本と同様にラーメンがランチタイムの人気メニューだったりします。日本のレストランが海外に進出した事例を紹介します。
日本企業にとってのビジネスチャンスは?
世界最大のうどんチェーン「丸亀製麺」のヨーロッパ1号店が、今年の7月にイギリスのロンドンでオープンしました。ワハカの本拠地であるリバプールストリート駅の近くにあるこの店は、できたてのうどんを3.45ポンドで提供するという安さを売りにしたお店が人気を呼んでいます。
丸亀製麺は、トリドールホールディングス(Tridor Holdings)とカプデシアグループ(Capdesia Group)のジョイントベンチャーとしてヨーロッパに上陸しました。グルメバーガーの老舗として知られるキース・バード氏が、ヨーロッパでのブランド推進を指揮しています。すでに4店舗を展開しています。
ロンドンでは、特にラーメンや、うどんに対する人気が高まっているようです。丸亀製麺一号店には、イートイン用の入口、ドライバーとクリック&コレクト(オンラインで注文してお店で受け取る)で注文するための入口があります。食事は、オープンキッチンで麺を調理している様子を見ることができます。トレンドになっているクリック&コレクトがあることや、日本文化の要素を踏まえたその店内の構造が成功の理由の一つになっているのではないでしょうか。
また、在宅勤務に慣れたイギリスの人は、家でコーヒーを作ることが習慣なため、コーヒーの需要が高まり、質の高いコーヒーが求められています。
日本のコーヒーブランドOmotesando KoffeeとArabica (Arabica)に続き、2021年1月には、UCCコーヒー(上島珈琲)が日本のブランドを英国に導入しました。
上島珈琲では、3種類のブレンドのコーヒー豆、ローストコーヒー、挽き売りコーヒー、ネスプレッソ対応のアルミカプセル、コーヒーバッグを発売しています。これらのブレンドは、オリジナルのレシピをもとに、ヨーロッパ人の好みに合うように味の調節がされ、イギリス人ようにローカライゼーションされた商品開発がされているそうです。
いかがでしょうか?今日はイギリスのコロナで影響の受けたビジネスを解説しました。調剤薬局の売上がコロナ以前に比べ増して高かったという事は、コロナの影響を受けて、消費者の健康に対する意識が高まり、健康管理を目的としたサプリメントへの消費意欲が高まっているとも解釈できます。つまり、日本でも健康サプリメントを販売しているビジネスには、市場の拡大としてイギリスが一つのターゲットになるかもしれません。
他の国に比べ、イギリスではすでに使用者が多かった、オンラインショッピングに関しても今後も伸びていくことが予想されます。これは、オンラインでの決済に対するイギリス人の不安が薄くなってきている事から、国境を取りはらって、イギリスでの顧客獲得ができる可能性があるという事です。
そのためにはまず、サイトをローカライゼーションし、イギリス市場から見て、理解出来、信頼できるサイトを作らなければなりません。いずれのケースであっても、東京エスクがサポートいたします。イギリスの市場調査から、ローカライゼーションまで、日系企業のイギリスサポートを一からサポートします。
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