
イギリス人のクリスマスの過ごし方と買い物の仕方
へティー・チョン(Hetty Chung)

11月と12月は、世界的に一番多くのイベントが存在する月です。特にイギリス人にとってクリスマスは一年の中で最も重要なイベントです。その事実は、小売業カレンダーにも反映されています。このような祝日とショッピングで賑わう時期に、イギリス人はどのように過ごし、買い物をしているのかについて書きました。
11月と12月のイギリスの祝日
海外のカレンダーでは、11月と12月は消費者の購買意欲が上がり、刺激的な時期となっています。11月にはブラックフライデーがあり、サイバーマンデーがあります。これらはいずれも米国で始まったイベントですが、イギリスでも同じイベントが存在するのでしょうか?
ブラックフライデーとは?ブラックフライデーは、アメリカで始まった文化で、感謝祭(Thanksgiving Day) の次の日とされています。この日、企業は大幅な割引やプロモーションを行うため、クリスマスショッピングの幕開け日となります。そもそもブラックフライデーの由来は、1869年9月24日に起きた株式市場の大暴落で、金の価格が突然大幅に下落したことにあります。多くのお店の売り上げが下がった結果、赤字となってしまいました。そこで感謝祭の次の日に、あらゆるお店は失われた売上を取り戻すために大規模なプロモーションやセールを行いました。すると赤字を乗り越え黒字になったお店が増え、今のブラックフライデーという言葉ができたのです。
イギリスでもブラックフライデーはありますか?ブラックフライデーが初めてイギリスで行われたのはアマゾンによるもので、2010年の出来事でした。その結果、イギリスでもブラックフライデーは近年徐々に普及しており、ブラックフライデーの前後はセールを開催するお店が増えました。今年のブラックフライデーは、2021年11月26日(金)です。多くの小売店が月の早い時期からお得な商品を提供しているため、今では「ブラック・ノーベンバー」と呼ばれることもあります。
サイバーマンデーとは?サイバーマンデーは、2005年に米国の小売業界団体であるNational Retail Federation(全米小売連合)が、感謝祭の翌週の月曜日にオンライン販売が急増することに着目して始まったものです。小売業界のニュースサイト「Charged」によると、2020年のサイバーマンデーは、過去に開催されたオンラインセールの中で最も売り上げが多かった日を記録しましたが、その後2021年の「Amazon Prime Day」に記録を破られました。
イギリスではサイバーマンデーがありますか?イギリスにもサイバーマンデーは存在しますが、値段の割引度などはブラックフライデーと大きく変わらず、事実上ブラックフライデーが延長したようなものとして扱われています。以前にも増して多くの人がオンラインで買い物をするようになった現在では、金曜日や月曜日という曜日に対するこだわりが薄れてつつあります。
2021年のサイバーマンデーは11月29日ですが、昨年と同様、ブラックフライデーの週末に行われるセールと大きな違いはないと思われます。
イギリスで最も大きな祝日、クリスマス。
クリスマスは世界中で祝われていますが、国によってそのさまざまな習慣や伝統の違いから、祝われ方が異なります。さて、イギリス人はクリスマスに何をするのでしょうか?

Boxing Day (ボクシングデー) – クリスマスの直後にあるイギリスの祝日です。ボクシングデーの起源については諸説ありますが、一般的には、教会が貧しい人たちのために寄付を集めたクリスマスプレゼントの箱(box)を開ける日であったことから”Boxing Day”と呼ばれると言われています。現在では、多くのイギリス人がクリスマスの休暇を利用して、ヨーロッパへ旅行に出かけたり親戚を訪問したりします。
現在、あらゆる規模の小売業者が、ボクシングデーを1年を締めくくる絶好の機会としています。大幅に値引きされた商品やシーズン終了後の在庫など、クリスマス後のバーゲンで商品の注文が殺到します。ボクシングデーのセールは、通常1週間以上続きます。クリスマスの数日前(12月23日)から始まることもあり、1月や新年のセールに発展することも多いので、英国の消費者はクリスマスから1月下旬にかけて、ほぼ1カ月間のあいだ割引を利用することができます。

クリスマスプディング – イギリスの伝統的なクリスマスケーキです。具材にプラムが使われることが多いため、プラム・プディング (plum pudding) とも呼ばれます。味や食感、外見は日本人が想像するケーキや一般に「プリン」と呼ばれるカスタードプディングとは大きく異なります。味は濃厚で芳醇、その食感は「ドライフルーツが舌に絡む」とも言われています。

ターキー(七面鳥) – イギリスのクリスマスの食べ物と言えば、ターキーです。ターキーを食べることが定番となったのは1960年代で、アメリカの感謝祭の習慣が影響していると言われています。
クリスマスプレゼント – イギリスは、クリスマス当日(25日)にプレゼントを贈る数少ない国のひとつです。他のヨーロッパ諸国では、クリスマスの前か後にプレゼントを贈る傾向があります。ほとんどの国は、24日にプレゼントを贈り、スペイン語圏ではクリスマス25日を過ぎてからプレゼントを贈ります。

クリスマスクラッカー – イギリスでクリスマスパーティーやランチ、ディナーに参加したことがある人は、クリスマスクラッカーを見たことがあるでしょう。このクリスマスのテーブルデコレーションを引っ張ると、小さなプレゼントやパーティー用の帽子、なぞなぞやジョークが書かれた紙が出てきます。

ミンスパイ – ミンスパイ(カシスやドライフルーツにハーブやスパイスを加えた小さなお菓子)を食べるのは、イギリスではクリスマスの時期の習慣です。「ミンスミート」と呼ばれていますが、ミンスパイの中身には肉は入っていません。

クリスマスマーケット – ドイツから初まりヨーロッパ全体、そして今ではヨーロッパ以外の多数の国にも広まったイベントです。イギリスで有名なマーケットは、ロンドンのウィンター・ワンダーランド(Hyde Park Winter Wonderland)、コベント・ガーデンマーケット(Covent Garden Christmas Love Market)があります。
イギリスでの年末年始の過ごし方
イギリスでは、12月末に旧年の終わりを祝い、新年を迎えることが伝統的です。12月31日の大晦日は公休日ではないので、ほとんどの人は通常通り出勤します。夜になると、多くのイギリス人は家でパーティーをし、年越しを祝います。また、パブやクラブで友人や家族と一緒に祝ったり、屋外での集まりや花火大会に参加する人もいます。またイギリスでは、元日をほとんどの人が休日として過ごします。そのため多くの人は家で家族と一緒にリラックスします。
日本企業にとってのビジネスチャンスは?
ボクシングデー
これまでボクシングデーといえば、Currys PC World(大手家電量販店)やDFS(室内装飾小売業者)、John Lewis(大手百貨店)など、大手の伝統的な実店舗での販売が中心でした。しかし、昨年のボクシングデーにオープンしている店舗数は例年から比べて、10.6%減少し、2010年以来の最小の店舗数となりました。この数字は、今年の予想にも引き継いており、かつてないほどに多くの人がオンラインショッピングを利用しています。そのため国境のないオンライン上のビジネスにおいて、日本の企業はオンライン上でイギリス人顧客をつかめるというチャンスがあります。
ブラックフライデー販売トップカテゴリー 2019vs2020

ブラックフライデー
ブラックフライデーの消費者傾向によると、クリスマスのストッキングフィラー(ローションやバス用品)やお菓子が他のカテゴリーに比べて増加しています。また、2019年に比べ、電気製品やテクノロジーへの関心は低くなっていますが、イギリスでは、例年他のカテゴリーに比べ、この時期になると消費者の電気製品やテクノロジーに関する関心が高い点と2020年のチャートでもトップにランクされている事実を配慮すると、ゲーミング商品や電子商品を販売する日本の企業にはビジネスチャンスです。
他のカテゴリーでは、子供服やヘルス&ビューティーなど、実用的なギフトや自分へのご褒美への関心が高まっています。実際、女性の場合、ヘルス&ビューティーはファッションよりも大きな支出カテゴリーになると予想されており、日本が持つ高品質ブランドを利用して、美容品やサプリメント、子供服を販売する日本の小売業者にとっては朗報と言えそうです。
クリスマス
2021年のホリデーシーズン、イギリスにおけるギフトへのクリスマス支出の平均額は、一人当たりの支出額で過去2年と比較して高くなりました。英国の消費者は、2020年の49.2英ポンドに対し、2021年は約51英ポンドと、家電製品に最も多くの支出をすると予想されます。衣料品および履物への一人当たりの支出は、2020年の26.94英ポンドから2021年には38.79英ポンドとなり、前年に比べて増加しました。
それに加えて、クリスマスはアルコール飲料市場にてっては大変重要なシーズンです。イギリス人はほぼ毎日お酒を飲む傾向がありますが、特にクリスマスとなるとその消費は上がります。また、日本酒という存在もイギリス人に年々人気がでています。その証拠に、この10年間でイギリスに対する日本酒の輸出総額が50%アップしています。この傾向からして、日本酒をクリスマス時期に高級なギフトとして宣伝するのもビジネスチャンスになるかもしれません。
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