
イギリスでみんながしているメンタルヘルスケアサービス7選
Tanaka.S

この記事では、イギリス在住のライターが同国でよく知られる、メンタルヘルスケアの手法について書きました。また、世界中で注目を集めるCBD商品に焦点を当て、イギリスで人気のCBDブランドと商品をピックアップし、消費者目線で商品に対する感想を書きました。最後にこのようなメンタルヘルスケアサービスはどこで宣伝されているのかについて書きました。ヨーロッパでメンタルヘルス関係のビジネスに携わっている人やこれから始めたい人にはオススメの記事です。
メンタルヘルスケアというトレンドについて
新型コロナウイルスの流行が続く中、遠くに住む家族・友人に簡単に会えなくなったことで孤独を感じる人が増え、世界中でメンタルケアがますます重視されています。今回は7月末にイギリス・ロンドンに移住したばかりの筆者から見る、イギリスでポピュラーなメンタルケアについてお伝えします。
老若男女問わず大人気だったイギリスのネットドラマ「Fleabag」では、30代前半の主人公の女性が、父親に誕生日プレゼントでカウンセリングチケットをもらい、カウンセラーと話す場面がありました。
そのくらい、イギリスでは若者の間でもカウンセリングは普及しているのかと思っていましたが、NHS(National Health Service=イギリスの国営医療サービス事業)で働く知人によると、「メンタルヘルスケア」はここ2,3年でポピュラーになってきたばかりとのことです。2019年にイギリスの英国民保健サービス(NHS)では医療改革が行われ、今後5年間のメンタルヘルスへの手当を強化したことも影響があるようです。
どのようなメンタルヘルスケアが浸透しているのか
セラピー
では実際に、イギリスに住む人たちはどのようにメンタルケアをしているのでしょうか。日本と比べ、気軽にアクセスしやすいと思われるのは、セラピー・カウンセリングです。
*「UK Therapy Guide」では、英国カウンセリング心理療法協会(BACP)や英国心理療法委員会(UKCP)で認定されたカウンセラーによるカウンセリングを、オンラインであれば20£〜/回で受けることができます。日本では1回あたり1万円近くかかるため、良心的な価格といえます。カウンセリングを受ける際は、受けたいセラピーのタイプを選択できます。
一般的な認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy)のほか、人間性療法(Humanistic Therapy)、アートセラピー(Art Therapy)など、数十種類のセラピーが用意されています。また、カウンセラーには、英語のほか、複数の言語を話す人もいるため、英語が第一言語ではない人も気軽にカウンセリングを受けることができます。継続してセラピーを受けたい人のためには、サブスクリプションのシステムも用意されています。
―それぞれのバックグラウンドに合わせたサポート
イギリスではさまざまな国からの、さまざまな背景を持った人たちが暮らしており、人種や性的指向ごとのコミュニティも充実しています。
*「BAATN」はイギリスで最大のセラピストのコミュニティで、Black、African、South Asian、Caribbeanのバックグラウンドを持つ人たちに向けたサービスです。個人のカウンセリングのほか、同じバックグラウンドを持った人たちが集まって話す会や、差別、ジェンダーセクシュアリティについてのイベントも開催されています。
*「MindOut」というチャリティ団体では、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランス&クィアの人たちに向けたメンタルヘルスサービスを提供しています。オンラインでのメッセージによる相談サービスや、カウンセリングのほか、メンター制度も設けており、キャリアサポートも充実しています。
セルフケア
健康管理としてのセルフケアも、日本ではあまり見かけなかったものがトレンドになっています。
サプリメント
イギリスは日射時間が短いため、冬は季節性のうつにかかる人が多いと言われています。そのため、ビタミンのサプリなどを摂取するのは当たり前になっています。そのほか、栄養素ごとのサプリ、女性向けのサプリなどが売られています。
また、睡眠の質を高めるグッズも、タブレット、スプレー、エッセンシャルオイル、ハーブティーなど、さまざま用意されています。
CBD
日本でも話題になっているCBD(Cannabidiol)も、イギリスでは日本よりも多くの製品が売られています。CBDは不安やストレス、体の痛みを和らげる効果があるといわれています。
CBDを使った商品は、イギリスでは、THC(Tetrahydrocannabinol)が含まれない/THC含量料が0.2%未満で、EU承認の産業用大麻を使用して製造されている製品に限り、購入・所有・使用が可能です。CBD商品を売るメーカーは、ライセンスを得る必要があります。
オーガニックスーパーの「プラネットオーガニック」では、オーガニック食品や健康食品などを取り扱っていますが、オイルはもちろん、CBD入りドリンク、チョコレートやグミなどの食品も豊富に揃っています。また、美容目的でのリップクリームや顔用パックまで売られています。
筆者も、「プラネットオーガニック」で売っていた、CBD入りのドリンク「drink 420」を試してみました。

出典:https://drink420.co.uk/
「drink 420」は、会社や満員電車でストレスが溜まった人たちに向けて、リラックスしてほしいという思いで作られたドリンクです。
1本に、15mgのCBDが入っているそうです。商品パッケージはポップで、カンナビスが全面にプリントされていますが、マットな質感になっておりギラギラしていないのも、センスがいいなと思いました。
今回私が飲んだのはワイルドベリー味で、甘さの中に少し苦味があるような味でした。飲んでから数分たつと、頭の中がふわーっとしてきて、お酒を飲んだような気分になりました。体も少しぽかぽかと暖かい感覚がしてきました。でも気持ち悪くなったりすることはなく、その後1時間弱のランニングをしたのですが、何事もなく走ることができました。
また、Themptation社の「CBD Chocolate」も食べてみました。

出典:https://www.themptation.co.uk/
また、Themptation社の「CBD Chocolate」も食べてみました。こちらは1枚あたり、20mgのCBDが含有されています。
味は普通のダークチョコレートと全く変わらず、美味しかったです。こちらは「drink 420」と比べ、すぐにお酒を飲んだような感覚にはなりませんでしたが、半分食べて、徐々にまったりしたような気分になりました。
イギリスで販売されているCBD商品は決して安くはなく、上記で試したドリンクは£2(=約300円)前後、チョコレートは£3(約450円)以上、オイルは£50(約7,600円)以上のものがほとんどです。ですが、オーガニック製品に興味があり、健康への意識が高く、健康のためであれば出費をためらわないような一定の層からは関心を集めているのではないでしょうか。また、リラックスしたいけどお酒は飲みたくない/飲まない若い世代にとっても、お酒の代わりとしてCBDドリンクはますます人気になっていくのではないかと思います。
ヨガ、瞑想
ロンドンには無数のヨガ教室があり、多くの人がヨガ・瞑想の「マインドフルネス」(今の瞬間に心をむける)の考え方に興味を持っています。マインドフルネスを活かし、ストレス・不安・うつに対処していくためのヨガセラピー講座も開かれています。「more yoga」というヨガ教室で開かれているヨガセラピー講座では、呼吸法やアーサナ(ポーズ)を通し、体のさまざまな感覚にどのように対応していくかを学ぶことができます。また、各クラスの前後にはセラピストとのディスカッションの時間も設けられています。
森林浴
日本発祥の「森林浴」が、イギリスでは「Shinrin-Yoku」として、森の中で散歩、または、ヨガや瞑想をするセルフケアとして注目されています。免疫を強化する、血圧やストレスのレベルを下げる、睡眠の改善などの効果が期待されています。ちなみに、この「Shinrin-Yoku」というワードは、キャンドルや石鹸の香りの名前にも、使われています。
メンタルケアサービスがどういったところで宣伝されているか
チャリティー団体の「mind」は、Instagramでインフルエンサーとコラボレーションし、オンラインでのライブを開催し、若い世代に関心を持ってもらえるような発信をしています。
また、オンラインカウンセリングのアプリの広告は、ポッドキャスト内でも何回か聞きました。日本では北米・ヨーロッパほど普及していませんが、ポッドキャストがこちらではメジャーで、「メンタルヘルス」「セルフケア」をテーマに発信している番組も多くあります。
ポッドキャストのリスナーは、興味のある話題を自分から進んで聞く人がほとんどです。TwitterやInstagramのように、“ながら見”をしているわけでないので、ポッドキャストではその分野に関心がある人へ、うまくリーチしている広告が多く見られます。
まとめ
イギリスでは、ダイバーシティーにあわせたセラピーや、コミュニティーでのメンタルヘルスのサポートが充実していることがわかりました。また、チャリティーが生活と密接しており、(たとえば街中では、チャリティーショップと呼ばれる、いらなくなった古着を回収して売り、その売上を病院に寄付するお店が見られます)多くのメンタルヘルスのサービスがチャリティーで運営されているのが特徴的でした。
また、セルフケアとしてCBDがポピュラーになっており、日本ではあまり見かけなかった商品も充実しているのも新鮮です。スーパーをぶらぶらするだけでもとても楽しめますので、イギリスにいらっしゃった際はぜひチェックしてみてください。
東京エスクはロンドン、アムステルダムを拠点とする市場調査会社です。東京エスクの使命は、ヨーロッパの市場をネイティブに理解する弊社だからこそ描ける興味深い洞察をお客様に提供し、御社様のヨーロッパ市場進出を市場調査、海外市場戦略、ローカライゼーションローカライゼーションという3つの観点からサポートします。
Tokyoesque Social Media 公式ページは以下となります。