ロンドンのイノベーション・学術エリア、Knowledge Quarter(ナレッジ・クオーター)について紹介!
ウォード 涼子
ロンドンのKnowledge Quarterというものを皆さんご存知でしょうか。これは、一言で言えば、ロンドンのイノベーションを活性化させる目的のため設置された、キングスクロス周辺の様々な研究施設等のクラスターです。大英図書館とロンドン芸術大学(University of the Arts London)によって創設され、21世紀における世界クラスの知識&ビジネスのハブとして、様々な施設、芸術作品などのコレクション、専門性の理解やアクセスを増やすことを目的としています。
様々な違った分野の知識を持った専門家や施設を一つのクラスターとみなし、フェスティバル、アワード、その他イベントなどを通じ、その活動をプロモーションしています。
ロンドンのKnowledge Quarter(ナレッジ・クオーター)の構成
ロンドンのKnowledge Quarterは、具体的にはどのように構成されているのでしょうか。
公式ウェブサイトによると、創設メンバーである英国図書館とロンドン芸術大学の他、大英博物館、カムデン・カウンシル、アイリントン・カウンシル、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London; 以下UCL)、ウェルカム・トラスト、リージェンツ・ハイスクール、グーグルの10施設が、役員を構成しているとされています。
ロンドンのKnowledge Quarterのパートナーは、アカデミア、文化、研究、科学、メディア関係の団体訳200から成っており、上記の役員となっている団体の他には、例えばArts Catalyst、Scriberia(ビジュアルを通してのコミュニケーションをサポートする団体、ビジュアルアートに関するワークショップなども行っている)、Wiener Library(世界最大級のホロコーストやナチスに関するアーカイブや資料を持つ図書館)などがあります。
世界に名の知れたブランドからスモールビジネスまで、様々な知識のリソースに富んだこのエリアに引き付けられていると言います。
ロンドンのKnowledge Quarter(ナレッジ・クオーター)のメンバーシップと、メンバーになるメリット
ロンドンのKnowledge Quarterのメンバーになるには、年会費(£500~£20,000;企業・団体の従業員数によって値段が変わる。)を支払う他に、キングスクロスから半径1マイル(訳1.6km)以内に存在し、アクティブに知識向上、普及に携わっている団体であるという条件をクリアする必要があります。
メンバーとなるベネフィットとして、ロンドンのKnowledge Quarterは、Networking & Knowledge Exchange(ネットワーキング&知識共有)、Advocacy(アドボカシー)、People(人)、Place(場所)を挙げています。
- Networking & Knowledge Exchange:様々な分野で活躍する、100のパートナー、そしてその7万人の従業員/メンバーと繋がり、知識を共有しながらコラボレーションすることができる。
- Advocacy:政府政策などに対し、意見を送る機会を与えられたり、政策決定に関わるキーパーソンやインフルエンサーなどと繋がり、自分にとって重要な問題について影響を与えることができる。
- People:地域のリーダー、学校、カウンシル(地方行政)と繋がることにより、よりコミュニティーのニーズに即した活動ができるようになる。
- Place:パートナーやメンバーだけでなく、外部コンサルタントを招いたり、キーとなるステークホルダーとを交えたイベントなどを通じ、地域の環境やサステイナビリティをサポートすることができる。
実際のメンバーには、医療研究の世界的先駆者であるFrancis Crick Instituteや、キングスクロスにイギリスの本拠点を構える、ユニバーサル・ミュージックなどがあります。
ロンドンのKnowledge Quarter(ナレッジ・クオーター)が期待するコラボレーション例
UCL新キャンパスを通じ、再開発地区東ロンドンへ
キングスクロス駅から高速電車で7分のところに、再開発・イノベーション地区に指定されている東ロンドンのStratfordという場所があります。この地区は、オリンピックパークに隣接しており、税関庁(Her Majesty’s Revenue and Customs; HMRC)、ロンドン交通局(Transport for London)、13.5百万英ポンドをかけたサイバー・イノベーションセンターであるLORCA(London Office for Rapid Cybersecurity Advancement)の他、BBCミュージックやヴィクトリア・アンド・アルバート(V&A)イーストなどの主要な文化的プレーヤーも集まっています。
このようなイノベーティブで、今後の更なる開発・成長が見込まれているStratfordに、Knowledge QuarterのメンバーであるUCLが新たにキャンパスを開くことになっており(2022年完成予定)、これを機にUCLを通じてこのStratfordへもロンドンのKnowledge Quarterのネットワークを広げたいという思惑があるようです。
ロンドンのイノベーション・まとめ
世界的にも名の知れた研究所、病院、美術館・博物館、企業が集まるキングスクロス周辺をクラスターとし、様々なコラボレーションを通じた更なるイノベーションを目指しているロンドンのKnowledge Quarterについてご紹介しました。現時点では、イノベーションを目指したコラボレーションを活性化させることを一つの目的としながらも、具体的なケーススタディーなどが見当たらないのが現状です。ロンドンのKnowledge Quarterはあくまでもクラスターで、メンバーである各施設が独自でやっていることと、ロンドンのKnowledge Quarterのコラボ例としてやっていることとの境界線も曖昧になっているという印象を受けました。実際、ロンドンKnowledge Quarterの正式レポート等を見ても、「今後予想される」コラボレーション、イノベーション例という書き方が多く、ロンドンのKnowledge Quarterとしてのあり方はまだ模索中なのかもしれません。今後の活躍に期待です!
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