【進化し続ける、世界の日本食ブーム!】イギリスにおける日本食チェーンレストラン4選。
ウォード 涼子、Gergely Kaszas
イギリスにおける日本食の流行の背景
イギリスにおける日本食人気はこの数年で一気に高まっています。Statistaによれば、2010年~2015年の間でイギリスの日本食レストランの数が67%増えたという調査結果が出ています。イギリスで「オリエンタル料理」(広い意味でのアジア系料理のこと)とくくられる料理の中では、日本食の人気度は中国料理、タイ料理に次ぎ3位と言われていますが、レストラン数の増加率で言えば、オリエンタル料理の中では中国料理・タイ料理を大幅に引き離しています。
2017年のイギリスでの日本食ブランド(後述するWagamamaなどのチェーン店を含む)の売上高は約7億9700英ポンドと計算されています。
レストランだけでなく、一般的なスーパーなどでも必ずと言ってよいほど寿司が売られており、その他にもカップラーメン製品など「日本的な」食品を目にすることも当たり前になってきています。また、日本食を食べた経験があるイギリスの消費者5人のうち4人はロンドン市外に住んでいるとされており、より日本食が一般的になりつつあること言っても良いかもしれません。
その流行の背景には、イギリスでの健康志向の高まりがあると言われています。イギリスでは日本食は体に良いという印象が強く、健康的な日本食が日本人の長寿に繋がっているという認識があります。
また、イギリスの消費者にとってどんな日本料理でも常に「エキゾチック」で、面白いという印象があり「インスタ映え」することも流行の理由という見方もあります。日本食料理店を訪れる客の半分はミレニアル世代(18~34歳)というデータもあり、ソーシャルメディアでシェアできるビジュアルがあることは日本食流行の大事な要素の一つのようです。
イギリスの主な日本食ブランド
2017年のデータではイギリス人の約23%は過去に日本食を食べたことがあると回答しています。そのほとんどが日本食レストランでの食事経験だったことから、自分の家で調理したものやスーパーで買ったものなどを含めると更に割合が高まる可能性があります。
しかしながら、Statistaの他のデータ(2015年)によれば、「日本食を食べたことがある」と回答したイギリス人のうち、68%がレストランで、44%がスーパーやテイクアウトサービスなどの調理済み食品を、17%が家で調理して食べたという調査結果が出てており、やはりレストランで日本食に触れる機会の方が未だに多いようです。
以下、イギリス国内で展開する人気日本食ブランドについて紹介します。
WAGAMAMA (ワガママ)
創設者: Alan Yau
創設年:1992年
店舗: イギリス中心、欧州など世界各国に150以上の店舗。
売上:3億4200万英ポンド(2018会計年度)
中国系イギリス人であるAlan Yauによって創設されたWAGAMAMAは、日本のラーメン屋にインスパイアされて作られたブランド。
ラーメンの種類が豊富なのが他の日本食チェーン店と違った特徴でもありますが、その他丼、「鉄板焼き」などの様々な日本食メニューが用意されています。イギリスのレストランでは当たり前に用意されているベジタリアン/ビーガンメニューも含まれています。
創設以来常により良いサービスを追い求め、季節ごとのメニューなどを展開しています。日本食以外にもアジア系の料理がメニューに含まれていて、「モダンなアジア料理」を押し出しています。
メニューはかなりイギリス人向けにローカライズされていて、例えばイギリスでは一般的に食されている「鴨肉」が乗せられたラーメンなどがあります。
必ずしも日本人の考える本場の日本食ではありませんが、イギリス人にはなじみやすいメニューになっています。
また、レビューには以下のような声があります。
「すごく厳しく言って10中7.2ポイントというところだけど、特にサクラソーダを飲むと日本旅行の想いでがよみがえる。イカやラーメンはとても美味しい。懐かしい気分にさせる事に関しては5スター、カーディフでもBridgendでも食事の質に一貫性があって良かった。」(日本人以外)
「見た目は焼き餃子なのですが、、、味が、、、絶対に変っ!!!!!!!
餃子の具が私の知っている餃子の具ではありません( ;∀;)なんか、シーチキンを更に細かくパテみたいにしたような物体が入っています(;´Д`) 餃子の皮も全然パリッと感がなく、、、
これを餃子と呼んでは餃子に失礼です!!」(日本人)
ITSU(イツ)
創設者:Julian Metcalfe
創設年:1997年
店舗: ロンドン中心に70店舗、ニューヨークに1店舗
売上:1億560万英ポンド(2017会計年度)
Itsuの創設者のJulian Metcalfe氏はアジアへ何度も足を運び、アジア料理について研究しました。
1)リーゾナブルな価格栄養満点で健康的な食事を
2)質の高い安心できる材料を使ってその場で調理
3)環境に優しく
4)KAIZENー絶え間ない改善
5)社員・スタッフにとって良い労働環境
といった5つの信条のもとに展開しています。メニューは、寿司、「東京ラップ」と呼ばれる「アジア系サラダ」、餃子、丼、味噌汁など多岐にわたります。朝食メニューや、またデリバリーサービスも行っています。全体的に野菜や果物などカラフルな盛り付けとヘルシーな感覚があることが特徴的です。
レビューには以下のような声があります。
「大英博物館近くのトッテンハムコートの店舗に行きました。スタッフはとても親切だったけど、チキンラーメンはおいしくなかった。どう考えても本場の日本食って感じではない。」(日本人以外)
「Itsuに一番最初行ったのは、回転寿司屋のレストランのほうだったんですが、ロンドンのどこよりもネタが良かったような気がします。ローカルのお客さんに合わせたメニューですが結構楽しめました」(日本人)
Wasabi(ワサビ)
創設者:Dong Hyun Kim
創設年:2003年
店舗: ロンドン約50店舗、ロンドン以外8店舗(イギリス国内)&5店舗(ニューヨークなどイギリス国外)
売上:9100万英ポンド(2017会計年度)
いつもランチにサンドイッチばかり食べているロンドン人に、新鮮で質の高い、本場の寿司や弁当を提供したいという想いから設立されたWasabiはイギリスの人気日本食チェーン店の一つです。寿司一つ一つをパッケージして小分けするという販売方法をイギリスで初めて行ったのがWasabiで、色々な日本食を試してみたいという顧客のニーズに合致しました。メニューには寿司だけでなく、カレー、照り焼きチキン、焼きそば、サラダなど多岐に渡り、また餅やどら焼きなどのお菓子類も販売しています。
レビューは以下の通り。
「とてもおいしかったです。寿司パッケージのチョイスがたくさんあったことが嬉しかった。サーモンがおいしかった。スパイシーチキンの弁当はしっかりとした量があってよかった。」(日本人以外)
「頼んだのは、spicy hot chicken(鳥の甘辛どんぶりに近いもの)。味は、麻婆豆腐と酢豚に唐辛子を入れた感じで、チキンはめちゃ入ってました。もうロンドンに1週間ほどいるのですが、全く米を食べていなかったので、なんだか涙するほどおいしかったです。」(日本人)
Yo! Sushi(ヨー!スーシ)
創設年:1997年
店舗: イギリスを中心に世界に約100店舗
売上:8990万英ポンド(2017会計年度)
日本食の中でも寿司を中心に展開しているレストランチェーン、YO!Sushi。創設当時、イギリスでは初となる回転ずしを提供し、ベルトコンベヤーで運ばれてくるというパフォーマンスはイギリスの消費者にとても新鮮に映りました。材料の新鮮さをモットーにしており、例えばYO!Sushiが利用しているサーモンは、生産地をトレースバックすることができ、Global GAP(水産物の国際的な品質基準)をクリアしているものにこだわっています。
イギリス大手スーパーチェーンであるWaitroseの寿司サプライヤーを買収したことなどでも知られています。
レビューは以下の通り。
「寿司が大好きでYo!Sushiで何年も食べている。少しずつ盛られた小さなお皿から好きなものを選べるので、色々なメニューを試せて良い。ベルトコンベヤーに乗せられてくるのもユニークで面白いと思う。」 (日本人以外)
「サーモンは美味しい。だから刺身は問題ないです。が、寿司のご飯部分が致命的に美味しくない。なんだろう、こう、寿司というか水分を抜いたおにぎりみたいな感じ。それにサーモンをのっけました! みたいな。」(日本人)
まとめ
以上、イギリスの主な日本食チェーンレストランブランドについて紹介しました。今回紹介したレストラン以外にも、ロンドン中心部の高級レストランや、デリバリー専門の日本食ブランドなどを含めると、そのバラエティーは更に増えます。
「本場の日本食」とうたっていながらも、「ヘルシー」「エキゾチック」など、元々イギリス消費者のもつ「日本食のイメージ」をうまく利用しながら、現地のニーズに合わせたローカライゼーションがされていることが分かります。
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