
なぜ5G?いつから開始?海外に学ぶ運営事例とヨーロッパの5G最新傾向
5G(第5世代移動通信システム)とは、4GやLTE、LTE-Advancedのさらに上をゆく次世代モバイル通信のことです。単純に速度が速くなるだけでなく、まったく新しい社会の枠組みを生み出すものとして、インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー分野では最も注目されている技術革新です。
5Gの特徴
5Gの発展への背景にあるのが、モノのインターネット(Internet of Things、IoT)。すでに2008年には世界人口を上回る数の「モノ」がインターネットに接続されたと言われています。今では一般的な人とモノをつなぐケースをはじめ、機械間(M2M)や車両間(V2V)など、数々の繋がりの形を通して、人々の暮らしや産業の姿を変えつつあります。
このような中で、高速なだけでなくより効率的、大容量、信頼度、バッテリーの最大化から応答時間(レイテンシー)の短縮まで、様々な要求に答えられると期待されている新しいネットワーク技術が5Gなのです。
ヨーロッパ全体で取り組む5Gプロジェクト、5G-PPP
ヨーロッパは、ネットワーク通信業界において東アジアやアメリカに比べて遅れをとっていると言われています。欧州委員会(EU)が先頭に立ち、通信後進国としてこれを打開しようとしています。
5G改革を進めている産官学連携プロジェクトが、2013 年 12 月 設立の5G官民パートナーシップ、5G-PPP(5Gインフラストラクチャ・パブリック・プライベート・パートナーシップ)です。
特にEUが強調しているのは、単に通信容量を増やすことだけでなく、応用技術です。その中心にあるのが、IoT技術、E ヘルス、スマートカー、AR・VR(拡張現実、仮想現実)スマートエネルギーを通してスマートシティを発展させることです。
ヨーロッパの5Gスタートアップ
1. 交通機関・自動運転
ThinxNet/シンクスネット社ードイツ
ドイツ・ミュンヘンのモノのインターネットのスタートアップThinxNet社は、Vodafone社との協業でTankTaler(タンク・テーラー)というSIMカードとGPSモニターがセットになっているシステムを展開中。これは、2001年以降生産された車ならどれにでも設置し、「コネクティッドカー」にすることができるもの。
例えば連動アプリ「ryd」を通じて燃料、運転距離をトラッキングすることができる。通勤に車を使う人は、マイレージによって税金がひかれるため、運転距離を全て情報として記録しなければいけない。rydなら自動的に計算し、情報をダウンロードできる。
その他、ガスステーションで車から離れずともアプリを通じてワンクリックでガソリンの支払いができる。
このような各サービスはそれぞれのアプリですでにしていたりするが、このアプリではそれらを一括して管理できるところが革新的。このように様々なものを車と「コネクト」することが、5Gの導入でさらに情報伝達の最速化が可能となる。
コヌックス/Konuxードイツ
ミュンヘン発の鉄道メンテナンス関連のスタートアップ、Konux。AI技術とスマートセンサーを使い、鉄道会社のメンテナンスやオペレーションをモニターする。
今後は5Gの発展により、よりリアルタイムなコンディションレポートやスイッチのモニタリングが可能となる予定。
イージーマイル/Easy Mileーフランス
Easymile社は自動運転のフランス発ジョイントベンチャーで、Ligier Groupという自動車メーカーと、Robosoftというテック企業で成り立っている。
スウェーデンのエリクソンの5Gネットワークと、スペインのテレフォニカのモバイルユニットをつかい、EasyMile提供のEZ10という完全自動運転ミニバスを2018年4月にパイロット運転。
5Gによって可能になるのは、より正確な自動運転と、自動車から送信されるリアルタイムなデータや情報。EasyMileが備え付けた数々のGPSセンサーやカメラセンサーが3Dマップをつくり、正確な位置情報をリアルタイムに提供。
また、高画質なマルチメディアのダウンロードやストリーミングが可能(例:近辺観光地、おすすめのレストラン情報など、空港のシャトルバスとして使用されている)。
2. AR/VR
オーグメンタ/Augmentaーフィンランド
Augumenta社はフィンランドのオーグメンティッド・リアリティー(AR)ソリューション企業。Ouluの5GFWDハッカソンでグランプリ1位獲得。リアリティメガネとAR技術を使い、Nokia工場の5G化のため、契約を結んだ。
例えば、スマート・アラートというサービスは、Smartglassesとよばれるスマートメガネをつけることにより、バーチャルスクリーンがみえ、そこで緊急アラートなどがポップアップする。バーチャルキーパッドとパネルも現れ、そこから操作のインプットが可能。

スマートアラートのようなサービスは、5Gによる素早い情報伝達によって実現できるので、このようなAR・VR技術と5G通信のコラボレーションが今後も期待されている。
3. システム・ネットワーク
ポールウォール/Polewallーノルウェー
Polewall社はノルウェーのテックスタートアップ。EU出資のプロジェクトの一環で、200Gbpsのネットワークスピードを成功させた。ワイヤレスのファイバーのようなスピードを実現。
StreetHopperという、手のひらに収まるサイズと、積み上げができる形状のネットワーク機も開発。
ラズウェーブラブズ/luzwavelabsースペイン
Luz Wavelabs社はスペインのシステム会社。ミリミーター、テラヘルツ周波数(THz)の発展に貢献したことが評価され、2017年モバイルワールドコングレスの世界初5Gスタートアップコンペティションで1位に輝いた。
最小の通信ロスと最大の柔軟性を持ち合わせ、5Gやその他今後登場する高度な技術を支えることのできる回線容量を開発。
4. 通信機器
2018年、ヨーロッパのオペレーター(ドイツのTelekom、フランスのOrange、スペインのTelefonicaなど)は、Ericcson、Nokia、Huawei等大手通信機器メーカーと提携していくうえで問題も多いと言われている。
というのは、インフラ(機器のコスト)を格段に下げなければ5Gのサービス開始は難しいのに、通信機器メーカー側の値段が高いままだということ。通信機器メーカー業界が既存の大手企業が独占しているため、このインフラ業界で始めるスタートアップも少ないのが現状です。
この実態を打開すべく、フランスのOrange社とFacebook、ドイツのTelekomとfacebookがそれぞれ通信機器メーカーのスタートアップにそれぞれ1億ユーロ出資している。
たとえばフランスでは€100 million が3,4年、Amarisoft、Athonet、Adipsys、Horizon Computingの4社のスタートアップを支援すると決まり、ドイツではAirraysとBSDNともう一つ名前がまだ未定のスタートアップに€100 million支援する予定。ここでは代表的なテレコムスタートアップ、AthonetとAirraysをみていきます。
アソネット/Athonetーフランス

モバイルコアの「ソフトウェア化する」、ソフトウェアベースのモバイル通信パッケージを、ワンストップ、一貫して企業や政府に提供しているイタリア発のスタートアップ、Athonet社。
2018年5月、 INTERNATIONAL CRITICAL COMMUNICATIONS AWARDSの金賞にも輝き、Ericsson, Nokiaのライバルになると報じられている。
エアレーズ/Airraysードイツ

Airrays社の具体的な目的は、ラジオネットワーク開設のコストを大幅に下げ、telekomなどのオペレータの5Gサービスをよりスムーズにすること。特に「ビームフォーミング(beamfoaming)」という5G技術をサポートする「スマートアンテナ」を開発中。
まとめ
5Gに乗り遅れているヨーロッパとはいえ、5G応用の方法において様々な形が模索され、期待が高まっていることがわかります。
Ericcsonは、2023年には世界人口の20%の人が5Gにアクセスしている、と発表しています。今後5Gがより発展して行く中で、ヨーロッパにおける5Gや、日本との協業状況について知りたい肩は、お気軽に弊社までご相談ください!