【生活保障・企業手当・在宅勤務・ ギグエコノミー】欧州における企業や政府のコロナウイルス対策
野本菜穂子
世界中で猛威を振るっているコロナウイルス。急速に感染者が増えている欧米地域では、在宅勤務の奨励や、政府による中小企業に対する手当など、落ち着いた対応が見受けられます。
どの国にも共通しているのは、大胆な決断でも、素早い対応を取っていることです。本記事では、欧州で取られているいくつかの先進的な事例を紹介します。
イギリス:政府による中小企業に向けた手当
イギリス政府は、2020年3月10日時点、従業人250人以下の中小企業向けに期間限定の手当を与えることを発表しました。コロナウイルスによって欠勤した従業員がいる場合、2週間分の疾病手当分を政府に請求できる仕組みとなっています。
また、同国では1年につき£51,000以下の法人税を払っている中小企業に対しては、実質100%の法人税の割引を決定しました。
ベルギー:一斉休校に伴い、学校を学童保育所として解放、働く親をサポート
2020年3月12日、ベルギーでは全国の小学校を4月3日まで休校にすることを発表しました。
お年寄りが最も死亡率が高いことを説明するとともに、「祖父母の家庭に預けることは避けてください」と呼びかけました。また、在宅勤務できる親はなるべくそうするように、とも発表しています。
日本と違うのは、休校となった学校では、どうしても働かなければいけない親や、医療分野で働く親の子どもの世話をする学童保育所をオープンしたことです。
スウェーデン:政府が疾病手当に関する制度を無効化
スウェーデンでは、karensdagという病気や怪我で欠勤する場合、1日目は疾病手当が支払われない制度があります。
この制度のもとでは、症状があるにも関わらず無理して出勤したり、コロナ検査に行かなかったりする懸念があったので、3月11日より、期間限定でこの制度は無効となっています。
イギリス:在宅勤務の仕組みを工夫し、ウェブ会議・テレビ会議ツールを効率良く使用
EU圏内で普段から在宅勤務をしている人は、2019年1月時点で10人に1人と言われています。これは完全に在宅勤務をしている人の割合であり、何らかの頻度で在宅勤務をしている人を数えるともっと大きな数になります。
イギリスでは、もともと金曜日は在宅勤務にしている中小企業は多く、弊社も普段から週2回はリモートワークをしています。コロナの影響で、普段在宅勤務をしていない企業も、チームを在宅組と通勤組の二つに分け、ローテーション制度を設けるパターンも多発しています。
弊社では、普段からチャットアプリのSlack(スラック)を社内の主要コミュニケーションツールとして使っています。完全に無料で、有料アップグレードをしなくても十分に使える便利なアプリです。
ほかにも、アメリカ発のCisco Systems Inc.は3月9日時点で、Webexコールのユーザー数、時間数を無制限にしました。また3月10日、GoogleはHangouts Meetのプレミアムサービスを7月1日まで無料で提供しています。本サービスでは、250人までの参加者、またライブスストリーミングでは100,000人までの視聴者と録音機能が付いています。
アメリカ:ウェブ会議サービスZoom(ズーム)はアメリカ、日本、イタリアの小・中・高校の使用を無償化
今回のコロナの影響で、リモートワークに必要なオンラインツールの株が急上昇しています。Slackもそのうちの一つで、同社のシェアは2月〜3月の間で30%伸び、さらにビデオ会議アプリZoomは5月〜3月の間で50%伸びました。また、3月11日の1日だけで、Zoomのダウンロード数は 343,000件を記録しました。
3月14日時点で、ZoomのCEO、Eric Yuan氏はアメリカ、日本、イタリアの小学校〜高校までの使用を無償化しました。オンラインフォームにて学校のメールアドレスや名前を登録すると、上限なしでビデオカンファレンシングが使用できます。
また、オールトリア、デンマーク、フランス、アイルランド、ポーランド、ルーマニア、韓国でも、問い合わせに応じて使用可能となっています。
イギリス:Deliveroo(デリバルー)やUber Eats(ウーバーイーツ)といったギグエコノミーへの影響
コロナによる経済打撃が大きい中、デリバリーサービスなどを中心とするサービスへの需要は高まるばかりです。自宅待機やリモートワークが増える分、使用率は高まっています。
イギリス発祥のデリバリーサービス、Deliverooなどは感染防止の策として、届け先にてドアの外に荷物を置いておく「ノーコンタクトデリバリー」を導入し始めています。
問題は、ギグエコノミーの担い手は、雇用者として企業に守ってもらえていないこと。疾病手当などは通常出ないので、非常に問題視されています。
まとめ
欧州では、大胆な法制度の改定や在宅勤務に関するルールを素早く、スマートに決めている印象を受けます。
海外におけるリモートワークのツールや、トレンドに関するリサーチの要望がある場合は、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。