≪前編≫大盛況だったロンドンプライドパレード2019!概要と特徴
ウォード 涼子
日本でも良く知られるようになってきている「プライドパレード」、みなさんはその意味をご存知でしょうか?
プライドパレードは、東京やロンドンを含む世界各国で毎年おこなわれているグローバルなイベントで、LGBTQ+のコミュニティーを「祝う」という意義があります。
後編である本ブログでは、2019年のロンドンプライドパレードのスポンサーシップやアクティベーション、またそれに対する消費者の反応についてご紹介します。
厳密にはプライドパレードに参加する人それぞれによってその意義は変わってきますが、性的マイノリティともいえるLGBTQ+の存在を可視化し、性の多様性がより社会で受け入れられるよう働きかけ、誰もが自分らしく生きていける社会を促進するという目的があると言えます。もちろん、LGBTQ+コミュニティをサポートしたい人であれば、異性愛者もアライ(LGBTQ+をサポートする異性愛者)として自由に参加することができます。
毎月6月は「プライド・マンス」(プライド月間)とされ、ロンドンを含む世界主要都市では一ヶ月を通じLGBTQ+コミュニティをサポートし盛り上げるためのアート展、映画上映会、トークセッション、ナイトクラブなど様々なイベントが行われます。
そのうち盛り上がりがクライマックスに達する一番の目玉が、このプライドパレートと言えます。
ロンドンプライドパレードの意義と歴史・背景
公式ウェブサイトは、ロンドンのプライドパレードについてこのように説明しています:
『祝賀、ダイバーシティ、アクティビズム、デモ — あなたにとってどんな意味を持つとしても、ロンドンのプライド(Pride in London)はまた今年も戻ってきました。そして、今まで以上のものになります。レズビアン、トランスジェンダー、ジェンダークイア、など・・・あなのアイデンティティが何であれ、プライド・ロンドンは人々に関する、人々のためにあるものです。』
どんな(性的)アイデンティティを持っていたとしても、それぞれの理由や目的で自由に参加できるのがロンドンのプライドパレードと言えます。
昨年2018年のロンドンのプライドパレードでは、Get The L Outというレズビアン団体が無理やりパレードの先頭に押し入り、「トランスジェンダーの人々はレズビアン女性の権利を脅かしている」と主張しだしたという残念な事件がありました。彼女らは、トランスフォビック(トランス嫌悪者)として多方から批判を受け、また同時にトランスジェンダーの人々に対するより多くのサーポートの必要さが叫ばれました。このような背景から、よりプライドパレードをインクルーシブにし、誰でも安心して、ないがしろにされない形で参加できるようにすることが、引き続き大きなテーマになっていました。
プライドパレードの起源は、1969年6月28日、ニューヨーク、マンハッタンのストーンウォールで起きたLGBTQ+コミュニティによって行われたプロテストとされています。「プライド・マンス」が毎年6月に設定されているのもこれが理由です。今年のプライドパレードは、世界でプライパレードが始まって丁度50周年目という節目を迎え、更なる盛り上がりを見せていました。
ロンドンで初めてプライドパレードが行われたのは、1972年7月1日のことでした。この日付も、1969年6月28日に起きたニューヨークでのプロテストに近い日付を、ということから選ばれました。1990年代の間、ロンドンでのプライド関連のイベントはどんどん参加者・観客数を増やし、音楽などを含めた今日のようなパレードとなっていきました。1972年のロンドン初のプライドパレードでは、約2000人が参加したと言われていますが、今では3万人以上という大規模になっています。
イギリス国内では、ロンドンだけでなく、ブライトン、マンチェスター、リバプール、バーミンガムでも大規模なプライドパレードが行われています。
2019年プライドパレードの行進ルート
今年のプライドパレードは、その起源となっている1969年のニューヨークでのプロテストから60周年という節目を記念するものでもあり、いつにない盛り上がりを見せていました。50周年を’Jubilee’ (ジュービリー;記念祭、祝祭のこと)と呼び、フェイスブックやインスタグラムでの投稿では#prideや#prideparade等というハッシュタグの他に、今年は#pridejubileeが多くのプライドパレードの画像とともにアップロード・シェアされました。
誰でも無料で参加できますが、特等席を確保したい場合は50ポンドで「パレード・グランドスタンド」の席を購入することができます。事前に予約が必要ですが、参加をやめたくなった場合はパレード開催日より7日前に申請すればキャンセル可能というシステムでした(全額返済)。
2019年のロンドン・プライドパレードは、7月6日の正午、ポートランド・パラスよりスタートし、オクスフォードサーカス⇒レジェンドストリート⇒ピカデリーサーカス⇒ローワー・レジェントストリート⇒ポールモール⇒トラファルガースクエア⇒ホワイトホールというルートをたどりました。
2019年ロンドンプライドパレードの特徴・特設イベント
このルート付近の何か所かでは、パレードだけではなく様々なイベントも開催されていました。以下がその例です。
プライド・ポップアップショップ (10:00~19:00)
ロンドン・プライドパレードのオフィシャルグッズを販売するポップアップショップ(一時的に設置されるショップ)がニールストリート(トッテンハム・コート・ロード駅の近く)に設置されました。様々なアイデンティティー/コミュニティを象徴するシンボルと共にデザインされた服、旗、トートバッグなどが販売されました。
中でも、今年はバイセクシュアルとトランスジェンダーの象徴する旗のフェイスペインティングが初めて楽しめるようになりました。このポップアップショップは、パレード当日のみではなく6月10~7月12日までオープンしていました。
オンラインショップは通年利用可能です。商品一覧はこちら。
トラファルガースクエア・ステージ(11:30~20:00)
パレードの終着地点の近くにあるトラファルガースクエアでは、パレードの目玉ともいえるライブ会場が設置されていました。多数の有名人の他、各LGBTQ+コミュニティを代表する人々がステージに立ち、この日を祝いました。
ウィメンズ・ステージ(12:00~19:45)
レスタースクエアに設置されたこのステージは、Diva Magazine(ヨーロッパの、レズビアン、バイセクシュアル女性のための雑誌)、P&G、Catalyst(女性が働きやすい環境づくりに携わる非営利団体)、Greene King(イギリスのパブリテーラー)とのコラボの元、Four of Diamons、Becky Hill、Saara Aaltoなどの有名アーティストを迎えました。
コミュニティ・ビレッジ(12:00~20:00)
ロンドンの中でもLGBTQ+コミュニティの中心的な場所とも言えるソーホーでは、コミュニティ・ビレッジが設置されていました。チャリティー、非営利団体がブースを構え、LGBTQ+の多様なコミュニティを代表する人々と関わり、一緒にプライドを祝うプラットフォームとしての役割を担いました。
ファミリーエリア(12:00~19:30)
セント・ギルズ・イン・ザ・フィールズ(トッテンハム・コート・ロード駅近く)では、スカウト(ガールズ/ボーイズスカウト)やLEGOの後援の元、フェイスペインティングなど家族で楽しめるアクティビティやステージパフォーマンスが行われていました。
赤ちゃんのおむつ替えスペースなども完備され、家族連れに優しい環境がしっかりと整えられていました。
アフターパーティー関連
パレード自体は正式には17:30に終了しましたが、その後も「プライドパレードのアフターパーティ」としてロンドン各地で様々なイベントがおこなわれていました。以下はその一部例です。
The Grand Goes GAGA
ロンドンプライドパレードのオフィシャル・アフターパーティの一つ。The Clapham Grandという会場で、プライドパレード終了後の夜9:30~午前3:00までパーティーが行われました。
内容は名前の通りレディーガガ一色で、ダンスフロアではレディーガガの人気曲が流れ続け、レディガガをテーマにしたドラッグクイーンによるパフォーマンスや、無料の「ガガ・フォトスポット」、「ガガっぽいグリッターメイク」などが提供されていました。
中でも、ガガの物まねを得意とするDonna Marieのパフォーマンスは、パーティーの目玉の一つでした。
Sink the Pink: Icons Ball ft. Melanie C.
これも、ロンドンプライドパレードのオフィシャル・アフターパーティの一つ。Sink the Pinkは、常に「超」がつくほどインクルーシブなイベントを開催していることで有名で、LGBTQ+コミュニティにも良く受け入れられている団体(アーティスト、パフォーマー、ダンサー、ドラッグクイーン、デザイナーなどを含む「コレクティブ=集団」)です。そのSink the Pinkが、アフターパーティとして、「Icons Ball」を開催しました。
Icon Ballは、「自分の憧れの象徴」をテーマとしたパーティとも言えます。パーティ参加者は、自分があこがれる歌手、アーティストなどの有名人に扮しパーティに参加していました。
このパーティの最大の目玉は、スパイスガールズの一員であるMelanie Cの登場でした。スパイスガールズは、最近再結成しライブパフォーマンスを行ったことがイギリスを中心に世界で騒がれていましたが、このアフターパーティでは、Sink the PinkのドラッグクイーンとMelanie Cが「再結成」!と称し、場を大いに盛り上げていました。
会場はSink the Pinkのゆかりのある場としてTroxyが選ばれ、夜9:00~朝4:00まで行われました。
London Pride Street Party
ロンドンで踊りたい場合は最高のバーとも言われているArcher Street Sohoは、毎年プライドパレードではこのストリートパーティを行っています。Andrew Derbyshire(俳優)を司会とし、Brenda Edwards(歌手、ウェストエンドミュージカルパフォーマー), Emma Lindars (歌手、ウェストエンドミュージカルパフォーマー), Carl Mullaney (俳優)などの有名人が参加。プライドパレード開始時間と同じ正午よりスタートし、プライドパレード終了後はMyki Beach Barへ場所を移し夜中まで大盛り上がり。参加無料ですが、テーブル予約をする場合は最低300ポンドのオーダーをする必要あり。
その他、ロンドンプライドパレードのオフィシャルアフターパーティとしては、Mystery VIP After Party, Queer Carnival – Little Gay Brother, JUICE & The World Stage After Partyが実施されました。
インターセクショナリティ:「性」、「ジェンダー」だけではないプライドパレード
「プライドパレード」と聞くと、LGBTQ+コミュニティに代表されるような、「性的マイノリティ」を思い浮かべる人も少なくないと思います。もちろん、そもそものプライドパレードの起源が性的マイノリティの権利を獲得するために始まったデモですので、それは全く間違いではありません。
しかしながら、ロンドンのプライドパレードでは、LGBTQ+コミュニティの中には、さらに人種や民族におけるマイノリティー、労働階級者、障がい者などがいることを忘れてはいけない、としています。彼・彼女らは、LGBTQ+コミュニティの中でのいわゆる「マジョリティー」(ここでは、例えば、白人、中流階級者、健常者のLGBTQ+などが当てはまる)よりも一般的にさらに主流社会から周縁化され、今までの歴史の中で違ったハードルを乗り越えてきたという背景があります。
「インターセクショナリティ」(「それまでのフェミニズムの「女性」というカテゴリーが「白人で中流階級」の女性を前提としてきたことに対する問題提起であり、様々な差別や抑圧は「交差」(intersect)しているという考え方」ーちゃぶ台返しアクションHPより)の重要性が叫ばれて久しく、こういったことから、LGBTQ+コミュニティ全体を祝福するプライドパレードのほかに、その中でも人種的マイノリティなどのそれぞれの属性に特化したセレブレーション・イベントが行われました。
その代表ともいえるのが、UK Black Prideです。UK Black Prideは、2006年に設立された団体で、アフリカ系、アジア系、カリビア系、中東系、ラテンアメリカ系のLGBTQ+をセレブレートする団体としてはヨーロッパで最大のものです。毎年一回、プライドマンス中にイベントを行うとともに、年間を通して様々なアクティビティを行っています。
今年のUK Black Prideによる最大イベントは、ロンドンプライドパレードの翌日、7月7日に、場所はイーストロンドンのHaggerston Parkで行われました。
また、メインのロンドンプライドパレード中のイベント会場の一つに「World Area」という会場がピカデリーサーカス駅近くのゴールデンスクエアに設置されていました。
このイベントは、LGBTQ+のアーティスト、DJ、プレゼンター、Pride’s Got Talent(ロンドンプライドパレードが主催する、LGBTQ+のアーティスト同士が競い合うコンペティション)の候補者等を迎え、アフリカ、アジア、カリビア、中東、ラテンアメリカにルーツのあるLGBT+を祝うというものでした。
これも、LGBTQ+コミュニティの中でも人種・民族的マイノリティを可視化しようという目的があり、このイベントスペースが設置されたのは今年が初めてでした。会場には、日本食を含む世界各国の食事が売られていました。
まとめ
以上、ロンドンのプライドパレードの概要やその背景についてご紹介しました。日本でもメジャーになってきているプライドパレードですが、歴史的・社会的背景の違いからロンドン独自のパレードとなっていっていることがわかります。
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