「決断が遅すぎる」「危機を世界全体で乗り越えるチャンス!」などなど…東京オリンピック・パラリンピックの延期に対する海外の様々な反応
野本 菜穂子
世界的な感染拡大が続く、新型コロナウイルス。2020年3月24日、IOC(国際オリンピック委員会)と安倍首相が話し合い、選手や観戦者の安全を第一に考え、東京オリンピック・パラリンピックは延期されることが確定されました。
これに対し、日本国外では「決断が遅すぎた」、「延期確定と同時に感染者数が増えたのはいかにも怪しい」、「来年開催なら、世界が団結し、危機を乗り越えたという最高なストーリーを描けるようにしよう」等、様々な声があります。
本記事では、東京2020の延期に対する世界の反応、特にヨーロッパにおける世論を詳しくご紹介します。
1. 「決断が遅すぎる」という反応
まずは、そもそも新型コロナの感染拡大の影響を真剣に捉えていたヨーロッパ諸国やアメリカからすると、「オリンピックなんていう場合ではない」という気持ちが、3月頭頃からすでに膨れ上がっていました。
3月24日、ついに東京オリンピックの延期の発表があった日には、Facebook、Twitter、LinkedInなどのSNS上では「やっと日本も現実が見えてきたか」「IOCにせよ日本政府にせよ、決断が遅すぎる」という意見が目立ちました。
The Guardian紙も、3月24日付けの記事で「今思えばきわめて不合理に感じるが、たった2週間前の段階では、なんとか2020年に開催できると開催者側は思っていた」と書き出しています。
同記事で紹介されている意識調査では、延期確定前の段階で、イギリス人1000人のうち95%もの回答者がオリンピック・パラリンピックを2020年に開催すべきではないと回答していたとのこと。
世界が感じている危機的状況を理解していない、日本の「ガラパゴス」的な側面が、悪く映し出されてしまったようにも感じられます。
2. オリンピック延期が決まったと同時に急増した感染者数への懐疑的な見方
もう一つ、ネガティブな反応がありました。それは、東京オリンピックの延期が決まったと同時に、急増した感染者数に対し、懐疑的な声多くあがったことです。
イギリスのタブロイド紙の一つであるThe Sunは、『東京オリンピック延期決定した翌日、不思議と「爆発的に」増えた新型コロナウイルス感染者について警鐘を鳴らす日本』と題した記事を出しています。
そもそも今までの検査数が少なすぎたのではないか、新型コロナウイルスが原因で死者がでていたとしても、他の疾患が原因とされてきたのではないか、ということや、検査数を抑えていたのはオリンピックをなんとかして実現させたいという政治的な判断が裏に潜んでいたのではないか、といったような、懐疑的な見方がされています。
ツイッターでも同様の声が散見されます。
『オリンピックが延期になった今、急に検査数を上げている・・・?』@drkdundas
『オリンピック延期が決まったとたん、小池東京知事が東京のロックダウンを発表し、感染者数が増えた。』@CookieM95849765
『東京2020延期が決まったとたん、東京と日本政府が新型コロナウイルスが国内で「流行」していて、「爆発的な」感染者数の増加があるかもしれないって認めるのは、なかなか興味深いことだと思わない?もはや、このことを今まで隠していたように感じる・・・』@murakamiwood
『東京オリンピック延期が決まったから、これから少しずつ真実が明らかにされるんだろうな!』@therealferiez
延期の発表当初は、このような懐疑的な声が散見されました。
3. 一旦落ち着いたあとは、前向きに捉えている人がほとんど
延期確定のニュースに対するショックが落ち着いたあとは、選手やファン、その他関係者の前向きな声が非常に目立っています。
LinkedIn上のコメントには、「私は東京のドイツ大使館に、東京2020のスペシャルコーディネーターとして派遣されました。状況は変わってしまいましたが、来年、コロナウイルスに対する人類の勝利を、絶対祝ってみせます!」といった声など、大きな試練を世界の人々が一つになって乗り越え、スポーツの祭典を祝う、といったオリンピックの核心をつくようなポジティブな見方が目立ちます。
BBCのスポーツ記事では、「もう二度と、4年に1度オリンピックが開催されることが当たり前であるとしない」「みんなが一つになれる大きなカーニバルになる」と記事が締めくくられています。
もちろん多くのオリンピック・パラリンピック選手たちは、無念さを表しています。それでも、「残念だけれど、安心した」という理解の声が圧倒的に多いことが特徴的です。
アメリカの水泳金メダリストのLilly King氏は、「あと1年、上達できる #Tokyo2020」とインスタグラムに投稿しています。同国の水泳選手Ryan Lochte選手は残念さを表しながらも、「この(コロナウイルスの)状況は、私自身、そしてオリンピアンよりもはるかに重大なこと。世界全体を影響している。私たちがもっとも重視するべきことは、安全に、健康でいること」とコメントしています。
#TokyoTogether #Tokyo2021 #Tokyo2020plus1 といったハッシュタグがすでに使用されており、国際的な世論も東京2020の延期に対し、前向きに捉えていることがわかります。
4. まとめ
当初、メディアと世論の両方において決断の遅さに対する苛立ちの声が多かった一方、延期確定後はその大きな決断に安心し、また2021年の開催を改めて楽しみにする声がほとんどとです。
現時点での世論から言えることは、新型コロナウイルスという「敵」に対し世界が一つになり、一緒にこの危機を乗り越えることこそが、来年の東京オリンピック・パラリンピックの成功に繋がるということ。
日本が来年、「危機を世界全体で乗り越え、人々の強さと絆を祝す祭典」としてピッチするには、現段階で日本が感染拡大に対しきちんと取り組んでいる姿勢を示さなければなりません。
先日、関東では自粛要請が下されましたが、それでもを外で花見をしたり、大人数で集まったり、責任のない行動が多く見受けられました。このような「平和ボケ」た行動に対し、世界は常に目を光らせています。2021年の東京オリンピック・パラリンピックの成功は、今の政府そして個人の言動にかかっている ー そういった風に、イギリスで活動している私たちには感じられます。
本記事で取り上げた日本国外での反応についてや、その他海外における状況についてより詳しい調査が必要な場合には、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。