【後半】【2020年最新版】イギリスの注目すべきスタートアップを厳選!
小林 エリサ
スタートアップ大国として、まだまだ勢いを見せているイギリス。先週の記事に続き、今週も2020年注目すべきスタートアップをご紹介していきます!
(前半はこちらから)
飲食・フードテック/FoodTech
カルマ・キッチン/Karma Kitchen
事業内容:2018年設立。キッチンを簡単+フレキシブルに借りる事ができる、キッチンスペースのレンタルサービス。最近では、新型コロナウィルスの影響で休廃業を余儀なくされたレストランの多くが、新たな収入源の為にデリバリーサービスを開始した事により、調理器具や流通、配達の設備等が既に備えられたKarma Kitchenの需要が急激に増加。
同社は現在、たった1つのキッチンサイトしか運営しておらず、従業員は5人しかいないものの、今月はじめに行われたシリーズAの資金調達ラウンドで、当初の調達目標であった300万ポンドをはるかに上回る、驚愕の2億5,200万ポンドを調達。今後は国内だけでなく、ヨーロッパ全般へと積極的に事業を展開予定。
資金調達総額/ラウンド:3億2000万ドル/ Series A
企業価値評価:10億3000万ドル〜20億万ドル(2020年7月時点)
ノットプラ/Notpla
事業内容:2014年設立。持続可能性を追求した飲食包装の開発事業。 代表的な商品には、生分解性海藻技術で開発した、柔軟で防水性のある可食性のカプセルポッドがある。食べられる事ができ、食べずに捨てても通常450年~1,000年ほどかかるとされるプラスチックの分解と比べ、4~6週間で生分解される。また、生分解性海藻を使用し開発された、その他のプラスチック代替品も開発中。Unilever社やMars社などの大手企業が支持しており、2019年は前年と比べ売上高が400%増加。プラスチックの利便性を保った、環境に優しい容器を作ることを目指している。
資金調達総額/ラウンド:700万ドル/Seed
企業価値評価:1800万ドル(2019年10月時点)
グスト/Gousto
事業内容:2012年設立。料理の手間と無駄を省く事によって、ユーザーがヘルシーで楽しくなる食事を作りたくなる、「レシピ+食材+調味料」のデリバリーサービス。毎週40品提案されるレシピの中からユーザーがメニューを注文すると、選択したレシピを作るための新鮮な食材と調味料が必要な分だけ自宅に届く。食材を購入しすぎてしまった際の食品廃棄物を削減だけでなく、料理を簡単にする事でより健康的な生活を送ることへの意識を高める事がGoustoの目標。
資金調達総額/ラウンド:1億8400万ドル/Late VC
企業価値評価:1億6400万ドル〜2億4600万ドル(2020年4月時点)
オッドボックス/Oddbox
事業内容:2016年設立。新鮮な野菜や果物をレスキューする事が目標のサステイナブルなフードデリバリー サービス。同社のサブスクリプションを注文すると、規格外やその他の理由で廃棄予定の高品質で旬な野菜や果物を、2週間毎・月毎といった顧客の指定したデリバリー頻度に合わせ、農家から直接家まで届けてくれる。個別に野菜を包装せず、プラスチックも使わないため、Oddboxで頼めば食料廃棄削減に加え、水やCO2の使用削減にも貢献できる。
また、新型コロナウィルスによる都市封鎖(ロックダウン)の影響で、このような新鮮でヘルシーな食材デリバリーサービスの需要が増加しており、Oddboxもまた、昨年と比較し収益がおよそ400%増加している事を公表している。
資金調達総額/ラウンド:840万ドル/Early VC
企業価値評価:1400万ドル〜2100万ドル(2020年3月時点)
ウィナウ/Winnow
事業内容:2013年設立。自社で開発されたAI技術、Winnow Visionを活用し、飲食店の食品廃棄物を半分に削減する事で、環境に良いだけでなくレストランのより効率的な運営もサポート。ロンドン、ドバイ、シンガポール、上海、クルージュナポカ、及びアメリカのアイオワシティにオフィスがあり、およそ40か国(1,000店舗以上)で事業が展開されている。 2019年にはフィナンシャルタイムズの「ヨーロッパで最も急成長している企業トップ100」(英「100 of Europe’s Fast Growing Companies」)にランクインされ、世界中のIKEAレストランでも活用されている、今後が期待されるスタートアップ。
資金調達総額/ラウンド:2400万ドル/Series B
企業価値評価:4800万ドル〜7200万ドル(2019年10月時点)
バイオテック & ヘルスケア/BioTech & Healthcare
オックスフォード・ナノポア・テクノロジーズ/Oxford Nanopore Technologies
事業内容:遺伝子解析サービスを提供するスタートアップ。ポケットに入るほどのDNA/RNAシークエンサーなど、NASAでも使われているような最先端テクノロジーを開発している。日本企業のタカラバイオも今月、本スタートアップのサービスの導入を開始した[2]。環境観察や疫病情報の処理への活用が期待されている。ユニコーン企業。
資金調達総額/ラウンド:7億2000万ドル/Growth Equity
企業価値評価:15億5000万ドル(2020年1月時点)
ベネバレント・AI/Benevolent AI
事業内容:2013年設立。AI(人工知能)を科学に応用し注目を浴びている、ヨーロッパ最大のAI バイオインフォマティクス企業。
資金調達総額/ラウンド:3億2000万ドル/Late VC
企業価値評価:10億ドル(2019年9月時点)
バビロン・ヘルス/Babylon Health
事業内容:2013年設立。パーソナル医者アプリ。イギリスはNHSという無料医療システムがあるが、医者(GP: General Practicioner)と予約を取るのが時間がかかることで悪名高い。そこで24時間いつでも話せるパーソナルドクターとつながるアプリが開発され、注目を浴びている。
資金調達総額/ラウンド:6億6800万ドル/Series C
企業価値評価:20億ドル(2019年8月時点)
フリーライン/Freeline
事業内容:2015年に設立されたFreelineは、自社開発のAAV遺伝子治療テクノロジー(外来遺伝子のゲノムを変化させず、必要な遺伝子をウイルスベクターとともに細胞内で増幅して分子を供給する方法。異常のあるDNAは新しいDNAに置き換えられ、正確にコード化されたベクターとなる。こうして異常のあるコンポーネントが置き換えられ、ウイルスとは見なされなくなる新しい治療法)を活用し、慢性の衰弱性疾患により良い生活を与えることを目指すMedTechスタートアップ。革新的な遺伝子治療技術と起業家の野心を組み合わせる事で、より広範囲に治療を提供する事が目標。
資金調達総額/ラウンド:2億9000万ドル/Series C
企業価値評価:3億2000万ドル〜4億8000万ドル(2020年6月時点)
教育×テック/EdTech
スパークス/Sparx
事業内容:2010年設立。Sparxは、AI技術とデータ分析を活用し、生徒にあった、よりパーソナライズされた教育方を提案。2018年9月に発売された、11歳から16歳向けの製品「Sparx Maths」は、32,000の数学の質問と適応型AIテクノロジープラットフォームの連携で学生の学習成果向上に貢献し話題になった。生徒の進捗状況に関する洞察をプラットフォームが提供する事で、教師は生徒に対し最も適切な課題及び学習体験を与える事が可能に。
資金調達総額/ラウンド:2580万ドル/Early VC
企業価値評価:9800万ドル〜1億4700万ドル(2019年9月時点)
カノー/Kano
事業内容:2013年設立。Kanoは、コーディングをより直感的に、そしてより楽しく学習できる方法を開発しているコンピューティング・キット事業です。コーデイングをゲーム感覚で楽しめるのが魅力。2018年には、イギリスの国際文化交流機関と提携し、バングラデッシュの学校に数百のKano端末を寄付。2020年8月には完全日本語対応のプラットフォームをローンチ予定でもあり、日本進出に積極的なEdTech新興企業。ちなみに、企業名の「Kano」は日本語の「可能」から由来している。
資金調達総額/ラウンド:4790万ドル/Late VC
企業価値評価:1億4000万ドル(2020年7月時点)
ブラックブリオン/Blackbullion
事業内容:2014年設立。デジタル上の学習方法(eLearning)のSaaSプラットフォーム。大学等の教育機関と提携し、学生に必要なファイナンシャル・スキルを学べるプラットフォームを提供。キングズ大学、マンチェスター大学、セントラル・クイーンズランド大学などの多くの大学で既に使用されており、英国、オーストラリア、ニュージーランドで70万人以上のユーザーが登録している。2021年までに100万人のユーザーを達成する事が目標。また、同社は今年のGES Awardsの準決勝(Global Edtech Startup)で優勝。来年行われる、世界最大規模の教育テクノロジー展示会「BETT Show」で行われる決勝戦で英国を代表する。
資金調達総額/ラウンド:100万ドル/Seed
企業価値評価:不明
商業/Retail
カズー/Cazoo
事業内容:LoveFilmやZooplaを設立したAlex Chestermanによって2018年に設立。服やその他商品を購入するのと同じようにオンライン上で車を購入する事ができるサービス。カズーはすべての車の管理・メンテナンスを受け持ち、顧客がオンラインで車を注文すると自宅まで無料で配達。7日間の返金保証と無料で90日間車のダメージや不具合を完全保証する事を約束。また、Cazooで車を購入すると、いつでも車体の部品等を交換・購入する事ができる。
資金調達総額/ラウンド:2億8000万ドル/Late VC
企業価値評価:10億ドル(2020年5月時点)
トゥルーバ/Trouva
事業内容:2013年設立。街中の小規模なインディペンデント・ショップの製品をプラットフォーム上で販売し、デリバリーのインフラも提供するeCommerce事業。Trouvaのウェブサイトでは、主にファッションや雑貨、インテリア製品などが販売されている。
Amazonに劣らない、高レベルなオンライン商業(eCommerce)設備を提供する事で、小規模なお店をサポート。製品を指定の場所でピックアップできたり、1時間以内の配送サービス、海外への配送サービス等、充実したデリバリーインフラを完備。また、同社はプラットフォーム上で販売できるショップを慎重に選んでおり、ショップは実店舗のある個人営業でなければいけない為、その点がEtsyやebayと言ったその他のリテール・プラットフォームと異なる。
資金調達総額/ラウンド:3580万ドル/Late VC
企業価値評価:8800万ドル〜1億3000万ドル(2019年11月時点)
パッチ/Patch
事業内容:2015年設立。ネットで「ピザを注文するのと同じぐらい簡単に」室内用の植物を注文し、家まで届けてくれる、「植物デリバリーサービス」。すべての植物には30日間の無料返品保証がついており、購入後は同社の「植物ドクター・チーム」が手入れ等の質問に直接回答し、アドバイスも提供してくれる。ロックダウンの影響でイギリスでは家にいる時間が増えた事により、Patchはここ12か月で124%の成長を遂げ、収益は440万ポンドと急速に成長している。最近はパリでも事業を展開し、更なる成長が期待される。
資金調達総額/ラウンド:1070万ドル/Equity Crowdfunding
企業価値評価:2500万ドル(2019年10月時点)
ポレン/Pollen
事業内容:2014年設立。インフルエンサーまたは「口コミ」マーケティングプラットフォーム。プラットフォーム内で「メンバー」は繋がりのある他のユーザーの「口コミ」によって旅行やイベント、スポーツなど様々な「体験」を発見して予約できるサービス。プロモーターやインフルエンサーは口コミを使ってチケットを販売。Northzone、Sienna Capital、Draper Esprit、Backed、KindredなどがPollenに投資している。
資金調達総額/ラウンド:1億1700万ドル/Series B
企業価値評価:3億2000万ドル〜4億8000万ドル(2019年10月時点)
SNS
ホピン/Hopin
事業内容:2019年設立。Hopinは、オンライン上でもリアルなイベントや会議等に劣らない、「ヒューマン」なデジタルスペースの開発に焦点をおく、オンラインプラットフォーム。ステージ、ネットワーキングスペース、ブレイクアウトセッション(円卓会議)、スポンサー等、様々な工夫や独自の機能を搭載する事で、参加者が世界中のどこからアクセスしていても、実際に対面し、人々とつながることができる場所を作り上げる事を目指している。
また、Hopinは「持続可能性」を強調し手織り、飛行機、電車、車の移動による環境への悪影響を削減できる方法としてオンラインイベントを推進している。新型コロナの影響で人と人との関わりがオンラインへと加速している中、今後の成長が気になるスタートアップ。
資金調達総額/ラウンド:4600万ドル/Series A
企業価値評価:1億6000万ドル〜2億4000万ドル(2020年6月時点)
その他
フェムテック/FemTech
フェムテックは「Female」+「Technology」(「女性」+「テクノロジー」)の造語で、女性の体や健康の課題をテクノロジーで解決する新たなスタートアップ分野。フェムテックの市場規模は、2025年までに欧米だけで約5.5兆円になるといわれている。
エルヴィ/Elvie
事業内容:2013年設立。アプリと連動した骨盤底筋を鍛えるデバイスと、ブラジャーの中におさまるウェアラブル(そのまま着る事ができる)搾乳機を開発・販売。アプリがデバイスと連動する事で、授乳のトラッキングやトレーニングメニュー等を提案。また、これまで病院に行って診察を受けてからしか処方してもらえなかったピルやHPV検査キットを、オンラインチャットでの診察を通して簡単に注文する事ができる。「セクシャル・ウェルネス(性の健康)」という概念からセックストイも販売。
資金調達総額/ラウンド:5160万ドル/Series B
企業価値評価:1億7000万ドル〜2億6000万ドル(2019年4月時点)
リーガルテック/LegalTech
リーガルテックは「Legal」+「Technology」(「法律」+「テクノロジー」)の造語で、企業の法務や契約処理に関する業務や、私生活の法律相談などの様々な法律サービスの利便性を、テックを活用し向上させる事が目的の新たなテック分野。これまで紙文化で分かりにくかった法律の世界を、ITなど最新技術を活かす事で、法律の分かりにくさを改善+業務効率化に貢献!
市場規模は、2018年に32億4,595万ドルを記録し、従来の法律関連業務がデジタルに移行するにつれ成長が期待さている事で、CAGR は37.7%と予測されている急成長分野。
フェアウィル/Farewill
事業内容:2015年設立。遺書の作成や相続税・不動産にかかる納税の分類、火葬の注文・手続き、死亡義務や個人の財産に対する税金の整理など、「死」に関連する様々な法的作業の手助けをするオンライン・プラットフォーム。最近では、ロックダウンやソーシャル・ディスタンシング、そして悲しいことに新型コロナによる死の増加により、Farewillの売上高は昨年と比べて800%も成長。Business Wire紙の記事によると、デスケアマーケット(「死」に関連するサービスを提供する事業の市場)は新型コロナの影響で、今年は世界的に1020億ドル(約11兆円)に成長すると予想されている。
資金調達総額/ラウンド:3650万ドル/Late VC
企業価値評価:1億ドル〜1億5000万ドル(2020年7月時点)
クリーンテック/CleanTech
サーヴェスト/Cervest
事業内容:科学者、数学者、開発者、エンジニアのチームによる3年間の研究開発に基づいて構築された、気候変動の観測・分析に特化したAIプラットフォーム。数十億のデータポイントを分析し、気候変動が国全体の将来にどのように影響するかを予測する事ができる。
新しい工場の建設に最適な場所を提案したり、農家の生産者に将来的に見込まれる収穫量などを明らかにすることができる。 他にも、保険会社が最も適切な保険料を設定する際に使用するなど、様々な分野・用途での活躍が期待できる。
資金調達総額/ラウンド:3010万ドル/Late VC
企業価値評価:4400万ドル〜6700万ドル(2019年5月時点)
モイクサ/Moixa
事業内容:2010年設立。スマートバッテリーおよびEV充電ソフトウエア開発事業。USBCellと呼ばれるNiMH充電式バッテリーを製造。2018年に伊藤忠商事とともに日本でサービスを開始し、また今月22日に同社は更に460万ポンド(約700億円)Moixaに投資。これにより、伊藤忠商事によるMoixaへの投資額は総額960万ポンド(約1,300億円)となった。
資金調達総額/ラウンド:3010万ドル/Late VC
企業価値評価:4400万ドル〜6700万ドル(2019年5月時点)
まとめ
今回の記事では、前半と後半に分けて、カテゴリごとに注目すべきスタートアップをご紹介してきました。中でもカテゴリを問わず、勢いを見せているのは、ウィズコロナ時代に適応した、SDGsや持続可能性を意識したスタートアップ群。
今後も動向が気になります!
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