
東京エスクパートナーのP&COによる、英国進出アドバイス!
P&CO 石戸亜季

「アジア市場に特化した英国ベースのビジネスソリューション会社」であるP&COは、東京エスクのパートナーです。今回は、P&COの石戸亜季様をゲストブロガーにお招きし、イギリス進出を考える日本企業へのアドバイスとして、税務手続き、会計、監査など、具体的な点についてご紹介します。
英国における日本企業
英語でビジネスができる欧州への玄関口として、日本企業に選ばれてきた英国。[1]日本からの英国進出企業数は、欧州内ではドイツに次ぐ第2位となっています。[2] ブレグジット後の通商交渉による政治・社会情勢が引き続き課題にはなるものの、在英日系企業の事業展開の意欲に大きく影響していないという調査結果も出ております。また、製品の高付加価値化やブランド力強化を模索する在英日系企業も見受けられます。G7・G20中 で、最も低い法人税率(現行19%)であることや、大幅な研究開発税額控除制度があること[3]も、英国進出の魅力といえます。
英国進出の形態
日本企業が英国へ進出する際の形態は大きく分けて、株式会社(Limited company)と英国事業所(UK Establishment)があります。株式会社(Limited company)は、資本金1ポンド・取締役1名からの設立が可能です。外資に関する投資規制はないため、日本企業が英国子会社の株式の100%を所有する形態が一般的です。設立の手続きは比較的簡単で、即日で登記が完了する場合が多いです。
英国進出の当初から子会社を設立するケースもあれば、当初は英国事業所という形で進出し、英国での事業の基盤が整ってから子会社の形態へ移行する企業も見受けられます。英国事業所は俗に、「駐在員事務所」や「支店」とも呼ばれております。英国事業所の設立に際しては、通常、日本本社の定款や年次決算報告書も提出する必要があります。英国事業所の設立登記も、即日で完了できる場合が多いです。
英国における税務手続き

英国にて会社/事業所を設立した後は、通常、下記の種類の税金申告に関する登録作業を英国の税務当局に対して行う必要がございます。
1. 源泉徴収税(従業員の給与計算に関する所得税及び社会保険料の徴収)
2. 付加価値税(VAT)
3. 法人税
登録が完了しましたら、通常、下記のようなスケジュールで税務申告・納付を行います。

英国における税率
- 所得税:基礎控除額(税金がかからない枠)は年間12,500ポンドとなっており、基礎控除額を超える額に対して20%(課税年収37,500ポンドまで)/40%(課税年収37,501~150,000ポンド)/45%(課税年収150,000ポンド超)の税率が適用されます。なお、年収が100,000ポンドを超えますと、基礎控除額が段階的に減額されます。
- 社会保険料(従業員負担分):基礎控除額(年間9,500ポンド)を超える額に12%が課せられますが、年収が50,000ポンドを超えますと超えた金額に対する税率は2%に下がります。
- 社会保険料(雇用主負担分):基礎控除額(年間9,500ポンド)を超える額に一律13.8%が課せられますが、年間3,000ポンドの控除を受けられる場合があります。
- VAT:英国で消費されるほとんどの物品やサービスに20%の付加価値税が課せられます。食品等の生活必需品の一部は0%が適用され、公共料金の一部など、5%の軽減税率が適用される場合もあります。
- 法人税率:現行の法人税率は19%です。
その他税務上の留意事項

- 社会保険料については、日本からの駐在員の場合は、日英社会保障協定により一定期間(最長5~8年)免除となります。
- 駐在員を英国へ送る場合は、駐在員は英国で確定申告を行う必要があります。
- 英国では企業年金制度が導入されており、現地にて従業員を雇用した場合、企業年金に自動加入させる必要があります(従業員負担率:5%・雇用主負担率3%)。
- 英国にて住宅用の不動産を使用する場合には、カウンシルタックスという地方税がかかります。
- 英国にてビジネス用の不動産を使用する場合は、ビジネスレイツという地方税がかかります。
英国における会計・監査手続き
会社の決算書は年に1度、カンパニーズハウスという機関へ提出をする必要があり、こちらは一般公開されます。ただし、小企業(※)の場合、簡略版の決算書(貸借対照表と一部の注記のみ)の提出が認められております。決算書の提出期限は決算日から9か月後ですので、日本と比べると大分時間の猶予があります。
監査については、小企業は免除されます。しかし、英国子会社の場合、子会社単体だけではなく、子会社が属するグループ全体の規模が小でないと監査が免除されませんので注意が必要です。これに対し、英国事業所については、監査を受ける義務はございません。
(※)英国会社法上における小企業の定義:下記の3つの要件のうち、2つを充足する場合、小企業として判定されます。
- 売上高:年間10,200,000ポンド以内
- 総資産:5,100,000ポンド以内
- 従業員数:50名以内
P&Coが提供できるサポート

P&Coにおいては、上記の会社・事業所の設立登記手続き・税務登録手続き・会計/監査/税務業務の全般を日本語でサポートするサービスを提供しております。また、英国進出前にタックスプラニングをすることで、渡英後の節税につながることもございます。英国への進出を検討されている場合は、なるべく早い段階で専門家へ相談することをお勧め致します。
P&Co連絡先
住所:Unit 13, 2 Artichoke Hill, London, E1W 2DE 電話: +44 (0)20 7264 0390
担当:石戸亜季
Eメール: akii@pcollp.com
ウェブサイト: https://www.pcollp.com/
出典
[1] https://www.gov.uk/world/organisations/department-for-international-trade-japan.ja
[2] https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/31da2020af937c23/20180030.pdf
[3] https://www.gov.uk/world/organisations/department-for-international-trade-japan.ja
※現行の法人税率は19%です、2020年4月から17%にまで下がる予定でしたが、19%で維持される可能性が現在高くなっております。