
【コロナ禍の欧州・日本関連M&A事情】RPCのパートナー&リーガルアドバイザーのナイジェル・コリンズとのインタビュー
野本 菜穂子
弊社のパートナーである Reynolds Porter Chamberlain(以下RPC)は、企業のM&Aや投資を専門にしたロンドンを拠点とする国際法律事務所です。今回は、日本デスクの主任であるナイジェル・コリンズ(Nigel Collins)に、日本のマーケットの展望と課題を語ってもらいました。日本文化やビジネスに深い理解を持ち、長年剣道もやってきたこともあり、日本語も流暢な法律専門家です。新型コロナウイルスの影響で、インタビューはビデオ会議で行いました。

野本: 今日はどうもありがとうございます!まずは、簡単に自己紹介をお願いします。
コリンズ: RPCにて、企業・法人のM&Aパートナーとして勤めています。企業の買収、売却、投資、リストラ、ジョイントベンチャーなどの法律面のサポートを行なっています。ヨーロッパ、アメリカ、アジア間の様々なプロジェクトの間に立って、アドバイスやコンサルテーションを行なっています。この際、文化の隙間を埋めるのがすごく重要ですので、そういったことに気遣って日々仕事を進めています。
野本: 新型コロナウイルスの影響で、様々なビジネスの動きが停止しているような気がしますが、いかがですか?
コリンズ: 実は、コロナウイルスに関わらずグローバルビジネスの観点から言うと色々動きがありました。イギリスでのロックダウン1ヶ月目(3月)は、すでに進行していたプロジェクトを終わらせることで忙しかったです。たとえば、金属技研株式会社(東京)によるサンドビック(Sandvik Powder Solutions AB、スウェーデン)の買収をアドバイズしました。金属技研株式会社は金属処理を行う先進的な企業で、サンドビックは約43,000人の従業員を雇用するグローバルエンジニアリンググループです。マーケットリサーチを実施することから、デューディリジェンス、買収企業が立てる新しいファイナンシャルモデルについてアドバイスしたり、多くのサポートを行いました。

他にも、イギリスのラグジュアリーバッグブランド、グローブ・トロッター(Globe Trotter)の 株式の売却のサポートもしました。グローブ・トロッターのオーナーは実は日本人で、Oakley Capitalという企業による過半数の株式の買収をサポートしました。
野本: そうだったんですね。今回のコロナによってマイナスな影響はありましたか?
コリンズ: 強いて言うなら、私たちが関わっていた多くのスタートアップがプロダクトをローンチする矢先、このコロナの影響で打撃を受け、ブリッジローン(つなぎローン)を活用せざるを得ない企業もいくつかありました。
それでも、スタートアップ界隈は粘り強さを見せていると思います。今年1月には、日系AIソフトウェア企業Kudan Incによる、米スタートアップのアーティセンス・コーポレーション(Artisense Corporation)の買収をサポートしました。Kudanは空間認識技術を開発する企業なので、アーティセンス・コーポレーション(カリフォルニア州)が持つ精密な3次元(3D)地図作製技術を取り込み、自動運転の技術に役立てる予定です。日経の記事でも取り上げられました。
停滞している分野もありますが、意外と動きのあるのがテック分野です。弊社でも、スタートアップ、大企業関わらず、引き続きサポートしていきたいと思います。

野本: そうなんですね!色々と困難はあると思いますが、いま仕事で心がけていることなどありますか?
コリンズ: このような厳しい状況ですが、このようなピンチの時こそ、信頼を築くチャンスでもあると感じてます。普段は日本へ出張し挨拶したりクライアントとの関係を保っていますが、今も「バーチャル出張」という形で頻繁にクライアントとキャッチアップしたり情報共有しています。不安が多い時こそ、連絡を細かくとってさらに強い信頼関係を作っていけていると思っています。
野本: それはそうですね。特に日本の企業は細やかな報告などを重宝するので、それはありがたく思われるでしょうね。最後に、アフターコロナの世界では、日系企業はどのような展望があると思いますか?
コリンズ: 比較的「日本的」な大企業などはコロナ前の体制にできるだけ早く戻ろうとする傾向があると思います。一方、スタートアップやそのほかグローバルな企業はこれを機にどんどん新しい働き方を導入していくでしょう。
野本: そうですね。「ニューノーマル」と言われているように、この危機を機に、新しい働き方や暮らし方への地盤が整うといいですね。本日はお時間ありがとうございました!

東京エスクはロンドンを拠点とするマーケットリサーチ・エージェンシーです。日本とヨーロッパの架け橋となります。日本と海外ビジネスの相互理解を促進するとともに、カルチャーという視点から、新たなビジネスチャンスを発見いたします。
何かご質問などございましたら、お気軽にこちらよりお問い合わせください。